約束された勝利

2/9
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
 だが、こうして成功を治める国を見ると妬む国がある。その国の隣には軍事大国、ペパマシェカラスチ公国があった。 ペパマシェカラスチ公国は独裁者を中心とした上位の富裕層たる貴族の贅沢三昧の維持と、新兵器開発・兵器の輸入・維持費、ABC兵器の維持費、兵士の練度の維持などの為に多額の軍事費がかかり、経済は常に火の車。こういった国家であれば国民の不満は溜まるもので…… 貧富の格差が広がり、民草は麻のように乱れに乱れ、繁華街のどこかでは常に暴動が起こるようになり独裁者は民が起こす革命を常に恐れるようになっていた。 独裁者は国を一気に豊かにする妙案を思いついてしまった。これまで国家予算を削ってまで整えてきた兵力、これを使わずに腐らせておくのは勿体ない。 国が豊かになれば民達も黙るだろうと考えての短絡的ながらに下衆な考えである。 「よし、戦争を始めよう」 思い立ったが吉日、独裁者はストロウ共和国に仕掛けることにした。何も知らない兵士を戦闘機に乗せて哨戒任務を命じさせ、ストロウ共和国の領空へと飛ばし、自爆装置を作動。その兵士も任務の前に独裁者直々に激励が行われた上に勲章を恩賜されたことで疑問には思ったのだが、雲の上の存在であられる我らがお父様たるお方(独裁者)の命令には逆らえずに飛び立つことになってしまった。 ストロウ共和国の領空内に飛んできたペパマシェカラスチ公国の戦闘機が墜落。その事実は「ストロウ共和国がペパマシェカラスチ公国の戦闘機を撃墜した」というカバーストーリーに書き換えられ、全世界に報道。ペパマシェカラスチ公国は徹底的に被害者を演じた。 ストロウ共和国も「我が国には対空ミサイルはない。勝手に我が国に領空侵犯を犯した上に事故を起こしただけじゃないか」と、反論をするも、大破した戦闘機と遺体の引き渡しを行ってしまったために、戦闘機のブラックボックスにある事故の証拠(そもそも遠隔操作の自爆)がなく悪魔の証明を行うことになってしまった。 ストロウ共和国に戦闘機を落とすような兵器がないのは全世界が周知しており、全世界はペパマシェカラスチ公国の主張を信じることはなかった。しかし、ペパマシェカラスチ公国は「隠れて兵器を持っていた可能性がある!」として挙兵。亡くなった戦闘機パイロットを旗印にしての宣戦布告を行った。戦闘機パイロットの妻も「疑念」こそ持っていたものの、それを口に出せば明日には命がないために、頭のいい官僚が書いた「ストロウ共和国に夫を殺されました」と言う作文を涙ながらに読むしかないのであった…… 尚、その妻であるが…… 作文を読み終えた後は「用済み」として、僻地に送られている。 真実を知っている故に亡命された場合を考えての措置である。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!