約束された勝利

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「恐れながら、我が国に軍隊が無いなら『借りる』と言うのはどうでしょう?」 「借りる? 今も聞いたように、我が国に軍隊を出すような国はないと説明を受けただろう?」 「いえ、国から借りるのではなくて、レンタル兵士会社から借りるのです」 「レンタル兵士会社? 何かねそれは」 「PMC、private military company。民間軍事会社が新しく始めた事業です。業務は軍事的なことなら何でもと言った感じです」 「ほう、そこから兵士を借りて防衛にあたらせるということかね?」 「彼らは『完全中立』をモットーにしておりまして、金次第でどのような任務も行うそうです」 「成程、金のみが味方と言うことか。正真正銘の『ころし』のプロということか。で? いくらぐらいかかるのかね?」 警察庁長官はタブレット端末でレンタル兵士会社のホームページを開き、国土防衛にかかる兵士のレンタル費用を計算していく。兵士のレンタル費用、兵器のレンタル費用、兵站のレンタル費用…… 途方もない額が計上された。ペパマシェカラスチ公国に払う予定であった賠償金の2倍の額面である。 それから財務大臣は国家予算から国土防衛にかかるレンタル費用の総額を引いた。決して少なくはない額だが、出せないこともない。むしろ、これで国が守れるなら安いぐらいだと感じていた。 「大統領、ご決断の程を」 大統領は暫し沈黙し、考えた。長い歴史のあるストロウ共和国を私の代で終わらせる訳にはいかない。何より、愛すべき国民を守らねばならない。 決断は下された。 「レンタル兵士を借りよう。空港・港湾・駐車場、全てを開放しレンタル兵士の受け入れの準備を」 翌日よりストロウ共和国にはレンタル兵士達が絶えず訪れるようになった。 空は戦闘機や輸送機が天を埋め尽くし、国境の道路には歩兵に守られた戦車や装甲車が列を作り、港湾には大艦隊とも言える空母や軍艦が海嘯となっていた。尚、これら全てはレンタル兵士会社のサービスで電撃的速やかに行われたもので、ペパマシェカラスチ公国は知る由もない。
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