僕は君の趣味じゃないし、君は僕の趣味じゃない

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「そう。ここのレバーは美味いよ? 臭みが全然ないから食べて。」  うわっ、レバーは苦手なんだけど……。どうせ食べるなら砂肝のほうが断然いい。幼い頃に気持ち悪くなった経験が頭をよぎる。 「ふふっ、渡良瀬君はレバーが苦手だってよ。シュウとは味覚が違うな。ほら、まずは鶏ももから。」  嶺さんに串をこちらに差し出されて、素直に受け取る。助かった。苦手な理由も言わずに済む。ももを食べながらビールを飲むと、ビールの味がそれほど気にならないことに気づいた。 「シュウ、何不貞腐れてるんだよ。」 「別に。」  よく見れば伊東さんが少し不機嫌? のようにも見える。レバーを串から全部引きちぎるようにして口に入れていた。 「お待たせいたしましたーー。生3つお持ちいたしました。」  店員の元気の良い呼びかけに左を見ると、明らかに僕よりも体力がありそうな女の店員さんがにこやかな顔で立っていた。お盆に盛り上がるように泡だったビールジョッキを3つ持っていて、通路側に座っていた嶺さんが取ってくれた。 「美味いな。他にも何か頼むぞ。タブレットとって。」  冷えたビールをまた半分ほど減らした嶺さんが、伊東さんに向かって話しかける。それから暫く、2人は何を頼むかで盛り上がりながらタブレットを操作していた。  僕も2杯目のビールに口をつける。さっきよりも冷えているような気がする2杯目は、苦味が全然気にならなかった。嶺さんから教えてもらった軟骨串や、豚串も美味しかった。苦手なレバーは伊東さんと嶺さんがじゃんけんをして食べてくれた。 「渡良瀬君は、レバー以外に苦手なものあるの?」  じゃんけんに勝った伊東さんがレバーを持ちながら問いかけてきた。 「苦手な食べ物……。」  レタス。小さい頃から「体にいいのだから食べなさい。」そう言われて育てられてきたけど、あの青臭い香りがダメ。成長して火の通してあるものなら何とか食べられるようになってきた。でも生は……。 「たくさんありそうだな。」 「あ、ありません! レタスだけです!」  嶺さんの問いに反射的に答える。言った側から2人にクツクツと笑われた。 「か、かわいい……。」  口元を両手で押さえながら呟く伊東さんを見て、嶺さんが悪戯っぽい笑顔を見せた。 「気をつけろよ? シュウにロックオンされたぞ。」 「へっ? ロックオン?」  間抜けに聞こえたのか声を上げて笑いながら、嶺さんが話し出した。 「シュウはゲイだ、それも質の悪いタチ。彼氏がいるくせに直ぐに他の()を狙う。」 「それほどでもないだろ。」  まだ口を押さえながら呟く伊東さんに開いた口が塞がらなかった。    
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