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次の日からの検査は、靄が晴れたような気持ちで臨めた。
その気持ちとは裏腹に、記憶は一向に戻らなかった。
足の怪我は大分良くなり、医者から一時帰宅の提案を受けた。
記憶が失くなりながらも、住んでいた場所には覚えがあったため、医者も記憶が戻る可能性があるとのことだ。
一度も顔を出してこない父親が、有り余る医療費を病院に渡しているようで、入院し続けるのも可能だった。
「一時帰宅?」
ヨウにどうするか相談してみると、彼女は少し考えた後に、顔を近づけてきた。
「いいんじゃないかな?でも自宅に帰るの?」
「実家には帰りたくないし、他にないからね」
「そしたら…」
ヨウは、後ろに手を組みながらモジモジし始めた。
「私のウチに来る?」
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