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「大丈夫?もうすぐだから」
一時帰宅の許可を得て、ヨウと一緒に街中を歩いていく。ヨウの家は電車を乗り継ぎ、駅から10分ほど歩いた築浅の集合住宅だった。
「狭いけど、どうぞ」
部屋は無駄なものがなく、リビングには木目のテーブルが置いてあり、ヨウは椅子に座るように促した。
ヨウは、キッチンの方に向かうと、何か準備を始めた。
しばらくすると、二人分の飲み物が入ったコップとカップケーキがテーブルに用意される。
「一時退院祝いだよ。記憶はゆっくり思いだそうよ」
ヨウがそう言うと、手元にあるケーキをフォークで刺して、差し出してきた。
「はい。あーん」
恥ずかしい気持ちになりながらも、口にくわえる。
スポンジケーキの甘味と、感じたことの無い独特の風味があった。体が受け付けないような感覚だった。
「これ…」
「手作りだったから…口にあわなかった?」
ヨウは味を確かめるように、自分のケーキを口に運んだ。
せっかく作ってくれたものだから、無下に出来ないと思い、ケーキを勢いよく口に運んだ。
「お、おいしいよ」
ヨウは驚いたように、一瞬目を開いたが、すぐに笑顔が戻った。
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