0人が本棚に入れています
本棚に追加
「これ…」
目の前に座っているヨウを見ると、今まで見たことがない表情だった。極寒にさらされ続けた氷柱のように鋭く、冷たい視線だった。
ページをさらに進めると、憎悪に身を委ねるような力強さと、深い絶望の闇をさ迷うような弱々しい文字が続いていた。
読み進めていくうちに、発汗と激しい動悸が自分を襲う。さらに追い討ちをかける文章が書いてあった。
『彼に妊娠したことを相談をした。彼には自分の子供じゃないと言われた。金は払うから子供は生まないでくれと言われた』
『彼のお父さんの秘書から、お金は渡すから口外するなと言われた。拒否したらどうなっても知らないと脅された』
次々に流れてくる汗。息も上手く出来なくなってきた。
そして、手を震わせながら、さらにページをめくると、水で滲んだような文字が書いてあった。
『誰かに階段から突き落とされた。お腹の子供はその衝撃で亡くなった。自分一人でも育てる決心をしたのに、守れなかった。ごめんね』
胸が燃えるように熱くなる。目も霞み始め、体に力が入らなくなり、椅子から転げ落ちた。
その拍子に、最後のページが捲れた。
『染野 アイ』
その日記の持ち主の名前が書いてあった。
最初のコメントを投稿しよう!