アイが正しかった

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「これ…」 目の前に座っているヨウを見ると、今まで見たことがない表情だった。極寒にさらされ続けた氷柱のように鋭く、冷たい視線だった。 ページをさらに進めると、憎悪に身を委ねるような力強さと、深い絶望の闇をさ迷うような弱々しい文字が続いていた。 読み進めていくうちに、発汗と激しい動悸が自分を襲う。さらに追い討ちをかける文章が書いてあった。 『彼に妊娠したことを相談をした。彼には自分の子供じゃないと言われた。金は払うから子供は生まないでくれと言われた』 『彼のお父さんの秘書から、お金は渡すから口外するなと言われた。拒否したらどうなっても知らないと脅された』 次々に流れてくる汗。息も上手く出来なくなってきた。 そして、手を震わせながら、さらにページをめくると、水で滲んだような文字が書いてあった。 『誰かに階段から突き落とされた。お腹の子供はその衝撃で亡くなった。自分一人でも育てる決心をしたのに、守れなかった。ごめんね』 胸が燃えるように熱くなる。目も霞み始め、体に力が入らなくなり、椅子から転げ落ちた。 その拍子に、最後のページが捲れた。 『染野 アイ』 その日記の持ち主の名前が書いてあった。
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