アイが正しかった

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焼けるような全身の痛み。心臓が尋常じゃないスピードで鼓動を打ち始める。 「ま…まさか…」 寝転びながらヨウを見上げると、ゴミを見るような視線を向けている。 「この後、妹は自殺したわ」 毒でも盛られたのだと思ったが、同じものをヨウも食べていた。 「こんなに上手くいくなんて笑っちゃう。記憶喪失で、食物アレルギーも忘れちゃうなんて。友達が電話しているところにタイミングよく連れていったり、浮気相手と二人っきりにしたり。いつバレるか、いつ記憶が戻るのか、ドキドキしたわ」 ヨウが自分の腹に蹴りを入れた。その痛みは遠のきそうな意識を僅かに起こした。 「あんたは妹を弄んで捨てた。そればかりか、お腹の子供まで。アイみたいな正しい子が死んで、あんたみたいなクズが生きてるなんて、絶対に間違ってる!」 必死で自分の記憶を辿る。こんな状態なのに、記憶は戻ろうとしない。
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