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もう意識を保つのも難しくなってきた。ヨウの目元が赤くなっているのが見えた。
今までの、ヨウとの思い出がフラッシュバックしてきた。
妹を死に追いやった自分に対しての憎悪だけでここまでやってきたのかと感心した。
信じていたものに裏切られるとは、こういう気持ちなのか。日記に書いてあることが本当なら、自分は殺されるべき人間だと思った。
不思議なことに、ヨウに対して怒りはなかった。記憶がなくなる前の、自分に対しての怒りだけだった。
何とか、最期に伝えたいことがあったので、薄れていく意識の中で、できる限りの力を振り絞った。
「命乞いかしら?」
ヨウの表情が見えないくらい目が霞んでいる。声のする方に向かって口を開いた。
「あ…あ…り…が…とう」
言い切ったところで、自分の意識は永遠に途切れた。
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