アイが正しかった

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西田刑事は、取調室に向かっていた。 取調室のドアを開けると、長い黒髪が特徴の女性が座っていた。 「染野ヨウさん…ですね」 彼女は短く頷いた。彼女は、ある殺人事件の犯人だと自首してきたのだった。 西田は、神妙な面持ちで口を開いた。 「実は…コウスケさんの自宅から、妹さんへの懺悔が書かれていた手紙らしきものが発見されました。日付は、彼が記憶喪失になる前日でした」 「え?」 ヨウは思いがけない様子で、西田を見た。 「どうやら、彼の父親が秘書に頼んで、あなたの妹さんを突き落としたらしく、それを知った彼は、父親と秘書の会話を録音した携帯を週刊誌にリークしに行こうとした時に、それを止める秘書ともみ合った結果、階段から落ちたらしいです」 「そんな…」 「彼の携帯は秘書が持っていました。復元したデータから会話も確認できました。おそらく松山議員は失脚でしょう。あなたの復讐は…果たされました」 ヨウの目に涙がたまっている。西田刑事には、復讐を喜んでいる表情には見えなかった。 「アイが正しかった…アイが正しかった…」 時計のように何度も、止まらない振り子のように一定のリズムで、取調室にはこの言葉が繰り返された。
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