1 今の俺

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 俺はクリーム系の方が好きだ。もっと言えば、あんこの方がさらに好きだ。  今日のおやつに、モンブランを選んだのは、棚に一番多く残っていたからであって、こいつの好物だからという理由ではない。自然とそっちに手が動いただけだ。 「メシ、何?」 「んー、今日はおでんにしました。大根は部屋に来てからずっと煮ておいたから、シミシミですよ。佐伯さんの分は卵2個、茹でておきました」 「ふーん」 「モンブランはあとで食べましょうね。さきに、お風呂入ります?」 「……」  とにかく世話を焼いてくるが、何故か鬱陶しくは無い。自分より一回り以上若く、一回り大きな体格の、バカ面の男だ。なぜか判らないが俺様は、こいつに部屋のカギを渡す程度には、油断しても大丈夫だという認識に最早なってしまった。 「ね、佐伯さん。風呂で背中流しましょうか?」 「やだよ」 「俺、したいなー」 「知らね」  そう言うと、一応シュンとしやがる。腹立つなー。 「……勝手にしろ」 「はーい。全部脱がせてあげますね」 「は?」 「佐伯さんのお世話するの、俺大好きなんです」  あれ、もう復活? つーか、俺も分かっていてしょっちゅうこんなやり取りをしてるな。つまんねえコントみたいだ。  ソファにめり込んだ俺の身体を引っ張り上げられ、バンザイのポーズをさせられる。高かった上質なニットをびよーんと雑に扱われて、脱がされた。スポンと顔を出した先に覗いた無防備な笑顔は、まだ子どものソレだ。フン。  ニットが脱げたので、バンザイポーズから腕を下げようとしたら、ヤツの腕でぐいと支えられ、無理矢理にそのまま磔みたいなポーズにさせられた。
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