運命は植え込みに突っ込んでくる

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 そして、私は、今、何回、 『そうじゃない』 と言われたんでしょう、とあかりが思ったそのとき、 「おねーちゃーん」 と声がした。  振り向くと、父、幾夫(いくお)が三輪車に乗った日向を連れてやってくるところだった。  散歩ついでに寄ってみたのだろう。  日向が三輪車から可愛く手を振ってくる。  日向は青葉に気づくと、彼を見上げて言った。 「誰、この人?  おねーちゃんの彼氏?」 「違うよー。  昨日車で飛び込んできて、ここの木をなぎ倒した人だよ~」 「……他に言い方はないのか」 と青葉に言われたが、いや、あなたのやったこと、そのまんま言ってみただけですよ、とあかりは思う。  青葉は三輪車の後ろの手押し棒をつかんでいる幾夫を見て、頭を下げた。
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