3章:戦闘技能試験・本戦

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「キョースケ。試合、ちょっとだけど見たよ。……大丈夫だって分かっているんだけれど、ちょっとだけ、ごはんも喉を通らなくなっちゃうかもって思っちゃった」  伸びをしていると唯がやや縮こまった声で言った。唯にしては珍しく元気が控えめだった。いつの間にやらサンドイッチを食べ終えたようで、今は両手にホットドッグを持っているので、食欲が衰えている様子はない。  ……コピーの能力は出来るだけ使いたくなかった。僕にとってトラウマを彷彿とさせる能力だが、唯にとっても良い思い出ではないからだ。あと変身解除の反動が辛すぎるし。 「安心してよ。僕の名前を呼んでくれたら、いつでも僕になるんだからさ」  能力の特訓では唯にお世話になった。変身の能力は、いってしまえば心や記憶を読んでしまうものだから、好き好んで協力してくれる人は中々いない。それなのに僕の能力が暴走しないためなら、と手伝ってくれた唯には、本当に感謝しかない。  大丈夫。今の僕は偽物にしか映せない鏡じゃない。ちゃんと自分が本物だと知っている鏡だ。憧れは憧れのまま、僕は僕のままだ。  そう返すが、唯の表情はイマイチ分からない。その理由は顔に影が差しているからなのか、それとも爆速でホットドッグを食べ終わり今は顔を隠すほどのバカデカいポップコーンを食べているからなのか。 「あの、唯さん? 今はシリアスな空気だったと思うんだけど?」 「……キョースケは自己犠牲的なところがあるけれど――」 「いや無理だよ、その空気を続けるの。こっちからだと顔が見えないからね? ポップコーンが喋っているからね?」  いつの間にかサンドイッチを完食してホットドッグを食べているところまではよかったけれど、流石にこのポップコーンはスルーできない。どこに隠し持っていたんだよ。 「……それ、食べきれるのかい? 見たところ10人前くらいはありそうだが」 「まぁー、2割かなぁ」 「食べきれる確率?」 「お腹の満足度」  マジかよ……という目でメガネ委員長が唯とポップコーンを交互に見てる。そして視線を切り替えるたびに減っているのでちょっとしたアハ体験みたいになっていて、更にドン引きしている。  これだけ超人的だと言魂だろうと予想してしまうが、驚くことに関係ない。いや、全く関係ないということはないかもしれないが、【食】だとか【貯】だとかではない。
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