3章:戦闘技能試験・本戦

8/10
前へ
/71ページ
次へ
 唯の言魂は【熱】だ。言魂でカロリーを消費しているから太りにくいし、食べ物の適温を保つことが出来るから女子にとっては夢の能力、なんて力説していた。  だからアイスクリームは溶けないし、ホットドッグも暖かいまま。まぁ、早食いや大食いは元々の素質だろうけれど。  ポップコーンの体積が半分になった頃、こちらはようやくサンドイッチを一つ食べ終わった。もしも怪我が治るポーションがなかったらボコボコにされたままだったから、とてもじゃないが食べ物は口に入れられなかっただろう。  ボコボコにし合った仲のメガネ委員長はお腹が減っていないのか、「ふむ……なるほど、イッチをサンドしているからサンドイッチなのだろうね」と食べ物で遊んでいる。イッチって何だよ。 「そういえば雨代鏡介クン、もう次は準決勝なんだね」 「ライトも勝ち進んでるらしいし、これに勝ったら兄弟対決、しかも最高技能者(タイトルホルダー)対決だね!」  ドクン、と心臓が跳ねる。……兄さんに手が届きそうなのが分かる。雌雄を決したのはまだ僕の習熟度(マスタリー)が100%になる前のこと。  今なら勝てる……と断言できないところが悲しい(さが)だが、良い勝負にはなると思う。  これで優勝すれば最強闘力(バトル)最高技能者(タイトルホルダー)。そしたら焦人にぃを殺した犯人の事件捜査に参加できる。 「まぁ、まずは目の前の試合に全力を尽くすよ」 「勝ち上がっているのは……ふむ。どうやら男鹿爆クンみたいだね」 「あぁ、朝言ってた人か。どんな戦い方だったか見てた?」  そう言うとメガネ委員長は難しそうな顔をした。メガネ委員長は意外と倫理観というかフェア精神があるというか、どちらかに肩入れすることを良しとしない性格だから、どこまで言って良いのか悩んでいるのだろう。 「まぁ、名前から想像がつく戦い方とだけ言っておこうかな」 「鹿の後ろ蹴りは怖いっていうもんね……」 「【鹿】の言魂でどうやって勝ち上がるのだよ」  今のはジョークではあるが、言魂の能力で大事なのは使い方だから、別に【鹿】の言魂で強者だってこともなくはない。  現にさっき戦ったおっぱい軍人こと鹿金も、そもそも言魂を使ってはいなかったが、かなり苦戦させられたし。  メガネ委員長の【眼】だって戦闘向きではない感じなのに強かった。習熟度(マスタリー)も参考にはなるが絶対ではない。
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加