3人が本棚に入れています
本棚に追加
唯の言魂は【熱】だ。言魂でカロリーを消費しているから太りにくいし、食べ物の適温を保つことが出来るから女子にとっては夢の能力、なんて力説していた。
だからアイスクリームは溶けないし、ホットドッグも暖かいまま。まぁ、早食いや大食いは元々の素質だろうけれど。
ポップコーンの体積が半分になった頃、こちらはようやくサンドイッチを一つ食べ終わった。もしも怪我が治るポーションがなかったらボコボコにされたままだったから、とてもじゃないが食べ物は口に入れられなかっただろう。
ボコボコにし合った仲のメガネ委員長はお腹が減っていないのか、「ふむ……なるほど、イッチをサンドしているからサンドイッチなのだろうね」と食べ物で遊んでいる。イッチって何だよ。
「そういえば雨代鏡介クン、もう次は準決勝なんだね」
「ライトも勝ち進んでるらしいし、これに勝ったら兄弟対決、しかも最高技能者対決だね!」
ドクン、と心臓が跳ねる。……兄さんに手が届きそうなのが分かる。雌雄を決したのはまだ僕の習熟度が100%になる前のこと。
今なら勝てる……と断言できないところが悲しい性だが、良い勝負にはなると思う。
これで優勝すれば最強闘力の最高技能者。そしたら焦人にぃを殺した犯人の事件捜査に参加できる。
「まぁ、まずは目の前の試合に全力を尽くすよ」
「勝ち上がっているのは……ふむ。どうやら男鹿爆クンみたいだね」
「あぁ、朝言ってた人か。どんな戦い方だったか見てた?」
そう言うとメガネ委員長は難しそうな顔をした。メガネ委員長は意外と倫理観というかフェア精神があるというか、どちらかに肩入れすることを良しとしない性格だから、どこまで言って良いのか悩んでいるのだろう。
「まぁ、名前から想像がつく戦い方とだけ言っておこうかな」
「鹿の後ろ蹴りは怖いっていうもんね……」
「【鹿】の言魂でどうやって勝ち上がるのだよ」
今のはジョークではあるが、言魂の能力で大事なのは使い方だから、別に【鹿】の言魂で強者だってこともなくはない。
現にさっき戦ったおっぱい軍人こと鹿金も、そもそも言魂を使ってはいなかったが、かなり苦戦させられたし。
メガネ委員長の【眼】だって戦闘向きではない感じなのに強かった。習熟度も参考にはなるが絶対ではない。
最初のコメントを投稿しよう!