3章:戦闘技能試験・本戦

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 午後になり、残っているのは僅か4人。ベスト4の名誉は僕にとって何の意味もない。勝たなければ、最強闘力(バトル)最高技能者(タイトルホルダー)を得なければ意味などない。  とはいえ、負けてもいいなんて思って戦いに臨む相手はいないだろう。戦う理由は違えど、勝ちたい気持ちは同じはずだ。  試合後のポーションで傷は癒えるし、体力や気力も回復する。それでも休息することに意味があるのかは分からないが、何かしらを充填しているのだろう。  男鹿爆。その姿を見たことはないが、ここまで勝ち上がっているので、言魂を用いた戦闘が強いということだけは理解できる。  まぁ爆発に近い能力なんだろう。となると、それを跳ね返せば簡単に勝てる……なんて、昨日までの僕なら考えていたことだろう。  最硬守力(ディフェンス)最高技能者(タイトルホルダー)は伊達ではない。条件を限定的にすることでどんな攻撃も跳ね返せるようになってから、僕は天狗になっていた。  それだけでは負けないけれど、勝つためには自分から攻める力も必要ということで格闘技術も鍛えた。それで充分、誰が相手でも勝てると信じていた。  けれど違った。どんな攻撃を跳ね返す能力でも弱点はある。ライトには何かしらの対策はされているかも……なんて思っていたが、1回戦から今に至るまでずっと苦戦で辛勝だった。  習熟度(マスタリー)が数字で出せるのに技能試験だなんて何の意味があるんだと思っていたが、『知っている』と『適切に使える』が、こうまで違うとは思わなかった。 「さて、そろそろ時間かな?」 「観覧席で応援してるから頑張ってねっ!」  メガネ委員長と唯に促されて、指定された試合会場へと向かう。ここからは実況解説がつくらしい。とはいっても観覧席のためのものなので、戦っている選手には聞こえない。  本当は本戦の1回戦から実況解説を予定していたのだが、どっかのおっぱい軍人が予定を勝手に前倒しにしたせいで間に合わなかったみたいだ。いったい誰なんだろう……?  そんなこんなで会場に着いた。これで4回目になるが、未だに張り詰めた空気を感じる。まぁ、良い緊張感だと思っておこう。 「アンタが雨代か?」  対戦相手はまだ到着していないのかな、と考えていると下から声がした。  背丈からして小学生くらいだろうか。女の子だが、目つきと口調が荒い。きょうだいの応援に来ていて、観覧席から迷い込んだのかな?
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