3章:戦闘技能試験・本戦

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「そうだよ。危ないから観覧席に戻ろうね。案内しようか?」 「ア゙ァ゙?」  子供扱いされるのが嫌な年頃なのか、親切を申し出ると更に目を鋭くして睨まれた。この年頃の女の子は同年代の男の子に比べて精神的に熟しているって聞くし、対応が間違っていたのかもしれない。しかしまぁ、随分と剣呑な雰囲気だな。視線だけで人を射殺せそうだ。 「安い挑発じゃねェか雨代ォ、ア゙ァ゙?」  今にも噛みついてきそうな様子だ。なんで首にリードがついていないんだろう。危ないじゃないか。 『試合を開始します。選手は位置についてください』 「えっ?」  それぞれの会場で選手が揃ったとアナウンスが流れる。僕の対戦相手はまだ来ていないし、それどころか小学生くらいの子が迷い込んでいるんだけど。いや待てよ。もしかして…… 『確認しました。カウントダウンを開始します。5、4、3、2、1……』 「自己紹介が遅れたなァ。オレは男鹿っつーモンだ。ぶっ殺してやるからよろしくなァッ!」 「君が男鹿だったのかよ!?」  勝手にリーゼントのヤンキーみたいなのを想像してたけど、女だったのかよ! ヤンキーっていうところだけは合っているかな。いや、飢えた猛獣と言った方が適切か。  っていうか僕の対戦相手、女性率高くないかな。男の方が戦闘向きの言魂を得やすいって言われているはずなんだけど。まぁ、4回しか戦ってないから統計的に偏っても仕方ないけど。  『――0! 試合を開始してください』 「『爆ぜろ』『爆ぜろ』『爆ぜろ』ォ!」 「『跳ね返せ』!」  互いに手を前に出し言魂を発動する。僕の前には縁のない透明な1mほどの鏡が現れ、一歩遅れて男鹿と僕の中間くらいのところで爆発が起きる。  鏡が割れていないので、目的は攻撃じゃなくて目隠しだろうか。爆発の副次物として煙が会場を満たし、男鹿の姿は見えなくなった。言魂を使えば探せるが、まだ試合開始から1分も経っていないので気力を温存したいところだ。  それに、この煙幕だ。こちらも見えないが、あちらも見えないはず。ならば言魂を発動するときに発する声そのものがリスクになるし、息を吸い込んだ時に爆風を吸い込んでしまったら言葉を紡ぐのも難しくなるだろう。  メガネ委員長の話だと、名前から想像がつく戦い方、といっていたが、案の定【爆】とみてよさそうだ。あの直情的な様子からひたすら爆破攻撃を仕掛けてくると思ったが、流石にここまで勝ち上がってくるだけの戦闘慣れはしているみたいだ。
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