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ディルは眉間に皺を寄せ、一瞬考えこむような顔をしたあと、ややあって深いため息をついて額に手を当てる。
「おい、一応確認するが、お前はなぜこんな時に、こんなしち面倒くさそうなコルセットをつけているんだ……」
「えーっと、メアちんがコルセットつけようねって……」
「ああ、これはやはりあのメイドの仕業か。……クソ」
古参メイドからの予期せぬ妨害にディルは小さく舌打ちしつつ、エミの複雑怪奇に縛り上げられたコルセットを外しにかかる。ディルの顔が近くなり、エミは小さく息を飲んだ。
「顔、近すぎぃ……」
「近づけなければコルセットの構造が分からぬ。我慢せよ」
「……。ハクシャク、おこぷん?」
「おこぷんではない」
ディルは短く答える。その証拠に、限りなく不機嫌な顔はしていても、紐をとく手つきはどこまでも優しい。大きな手は丁寧に一つ一つボタンをはずし、紐を外していく。
ああでもない、こうでもないとぶつくさ呟きながらコルセットを外そうと格闘するディルの頭を、エミはちょうど手があいているのもあってそっと撫でた。
ディルは抗議をするような目をエミに向ける。
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