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どうやらこの優しい手つきから鑑みるに、大声を出す必要はなさそうだ。
エミが心のなかで胸をなで下ろしている一方、「お預け」を食らっている状態のディルの薄青色の理知的な瞳に、ちらちらと獰猛な色がよぎりはじめていた。
(くそ、この聖女は見れば見るほど可愛すぎやしないか……!?)
大人しく見上げてくる目は潤んでいて、ふっくらとした唇は見るからに柔らかそうだ。その上、健康的に引き締まった太ももやかろうじて露出しているエミの細い肩だけでも、ディルにとっては十分煽情的に映る。今すぐにでもむしゃぶりつきたいと思うほどに。
やがて、最後の紐を抜いたディルは黙ってシュミーズごとコルセットを床に投げた。
ほっそりとした肢体が、月明かりに照らされる。
「…………きれいだ」
闇夜の静けさに溶け込む低い声で、ディルは呟いた。
ディルの熱視線に耐えられなくなったエミが、恥ずかしそうに身体を両の手で抱こうと動く。しかし、ディルは反射的にその手を握ってそれを阻止した。二人の顔が近くなり、どちらからともなく唇が触れるだけのキスがかわされる。
ディルの何かをこらえるような小さな吐息が、エミの普段外気に晒されない胸元の皮膚の薄い場所をくすぐる。
「ふっ……、息がくすぐったい……」
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