聖女、来る!

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「差し出がましいことを申し上げますが、もう少しリラックスされはいかがでしょうか。 本日は聖女エミ様が、ガシュバイフェンにいらっしゃるのです。未来の花嫁様になるお方と初めて会うのですから、緊張なさるのはごもっともですが……」 「緊張している? 私が?」  ディルは自分の手首に片方の手を添え、しばらく脈拍を測ったあと、ふっと息を吐いた。 「脈拍はいつも通り。体温も変わりはしない。つまり、私は緊張していない」 「さ、左様でございますか。失礼いたしました」 「……これは備考だが、昨日はほとんど眠りにつけず、今日の朝食はほとんど食べられなかった。胸のあたりが不自然にソワソワしたのだ。……しかし、そのような状態だからといって、緊張状態との相関性は取られないと判断する」  堰を切ったように話し始めたディルに、セバスチャンは一瞬息を飲んで、それから胸の内に浮かんできた一言をそのまま口にした。 「そ、それは、だいぶ緊張されているのでは……?」  セバスチャンの一言は正論だったものの、ディルはギロリとセバスチャンを睨んだ。気が小さいセバスチャンは、慌てて口をつぐみ、目を泳がせる。
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