聖女、来る!

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 再び、沈黙が二人の間に流れる。  セバスチャンは、こっそり分厚い本に目を落とす彼の主の横顔を見つめた。相変わらず、表情は硬いままだが、同性である彼の目からしても、ディルは十分魅力的に映る。  凍てつく冬の空のような青い瞳。程よく整えられた輝く銀髪。鍛えてもいないのに肩幅はがっしりとしていて、若くから宮廷に身を置いていたためか、立ち振る舞いは優雅で洗練されている。  その上、神経質そうではあるものの、彫りの深い顔立ちは名匠の彫刻のように整っており、黙っていても――いや、黙っていればこそ、女たちが黄色い悲鳴を上げるような色男なのだ。 (まったく、主様は黙っておられればすべての貴族のご令嬢たちが恋に落ちてもおかしくないだろうに……。今回の婚約者様は聖女様と聞いたが、果たしてうまく行くのだろうか……)  セバスチャンは内心深いため息をつく。
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