79人が本棚に入れています
本棚に追加
麗子さんとの結婚をぶち壊した原因は私だ。
きっともう話しかけても貰えないだろう。
そう覚悟した三日後、なぜだか山科さんに呼び出されアプリコットで二人で飲んでいた。
山科さんはあのカッコつけた私服じゃなく、ジャージに近い服を着ていた。
「服どうしたんですか?麗子さん来るかもしれないじゃないですか?」
山科さんは気が抜けたように笑った。
「もういいんだよ、返事はわかってる。俺の性癖を知られてしまった以上、もう無理だ」
悔しがって夜も泣いている想像をしていた。それなのに現実の山科さんは爽やかに笑っている。
「俺はわかってたんだよ。身分不相応だってさ」
「そうですよね」
「何だよ、そうですよねって……でも俺はなんの後悔もない、麗子さん相手に考えさせてくれって言わせるまで善戦したんだぞ」
「それだけでも、すごいじゃないですか」
とりあえずの相槌をうつ。内心浮かれているのは秘密だ。カルアミルクがいつも以上に甘い。
「だろ?もうこれで夢の世界はおしまいだ。俺は現実に戻る」
一瞬自分もチャンスがあるんじゃないかと思ってしまったのは秘密だ。
そして、山科さんがそこまで言いかけた時だった。
「山科さん、優美さん、こんばんは」
誰かに声をかけられ、振り向くとそこにはワンピースを着た麗子さんが立っていた。
「ここに来たらお二人に会えるような気がして来てみたら、本当に会えた」
麗子さんが動くたびに甘くていい香りがする。
「優美さんは、山科さんと性別を超えた親友だと思うんです。だから、一緒に聞いてください。あの、山科さん。この間のお返事なんですが」
麗子さんがそう言いかけた。
山科さんはかしこまり、これからフラれるぞと気まずそうな顔をした。
最初のコメントを投稿しよう!