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あれから二週間、山科さんからの連絡は無くなった。本当に綺麗さっぱり無くなってしまった。
会社で姿は見るし、事務的な会話はする。今まで一日一回は何か言ってきていたが、全く私に話しかけて来なくなったのだ。
もう利用価値ないもんな……
部屋で一人、真っ暗な中、何度もスマホを確認する。
付き合ってたわけではない、奴隷生活を送っていただけなのに、元彼からの着信を待つ女の気持ちを味わえてしまった。
部屋をノックされる。
「優美ちゃん、妙ちゃんと夢ちゃん来たわよ」
慌てて飛び起きると、妙ちゃんと夢はそんな私をみて笑った。
「彼氏と別れたみたいな顔して」
「本当、バカみたいだよね。奴隷から解放されたっていうのに」
無理して笑ってみたが、よっぽど不自然だったようで、妙ちゃんと夢が慌て出した。
「優美、元気だしなって」
「男なんて星の数ほどいますよ」
これはまずい、何とか立ち直らなければならない。
「粗治療する、妙ちゃんが聞いた噂全部教えて」
妙ちゃんは一瞬困った顔をしたが、すぐにいつもの強気な瞳に戻る。
「なんか、大金星って男の人達は大騒ぎしてるし、もう麗子さんの家族に紹介されたらしいりそして、麗子さんが近いうちに海外転勤の辞令出されるから、結婚して山科もそれについて行くってさ」
「はははっ、そう」
机に崩れ落ちると、二人は私の頭を撫でた。
「優美、元気だしなって」
「優美さん、新刊持ってきましたよ」
一瞬、顔を上げて新刊を手に取ったが、どうにもこうにも元気が出なくてまた机に崩れ落ちた。
いつか、また新刊が手に取れる日まで。
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