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部屋に入って来た二人を侑士さんは穏やかな笑顔で出迎えた。
二人はこの部屋に違う誰かがいたことに、驚いていた。
「どうも、この間コミケでお会いしましたね」
「あの節はお世話になりました」
妙ちゃんと侑士さんか会話を始めたのを皮切りに、夢も侑士さんと話し出す。
そしてオタクが四人集まれば、勿論話題は絶えない。
「この間、薔薇は集まるの作者にたまたまお会いしたんですよ」
侑士さんの自慢に私たち三人は悲鳴をあげた。
「あんなにハードな漫画描くのに、以外と普通の方でした」
それぞれがあのハードシーンを思い浮かべ、四人で爆笑した。
話題が最高に盛り上がった頃、侑士さんのお母さんが部屋に呼びにきた。
「侑士、いいお時間になったから」
侑士さんのお母さんが入ってくる瞬間、誰からともなくトレンディドラマの話に切り替えることに成功した私たちは、互いに顔を見て頷き合った。
「それでは、優美さん、妙子さん、夢さん、失礼します」
侑士さんが帰った後、妙ちゃんと夢は興奮していた。
「結婚決まったの?」
慌てて否定する。
「しないって、親が勧めてるだけで」
「いいじゃん、恋の傷は新しい恋で治すべき」
「そうですよ、侑士さんいい人だし」
「いや、いい人なのはそうだけどさ」
「じゃあ試しに付き合ってみればいい!」
「そうですよ、現実の体験がまた作品に反映されますから」
「あーじゃあ考えておくわ」
世にもいい加減な返事をした。山科さんは他の誰でも穴埋めできない。けれどそんなこと口に出して何のいいことがあるのだろうか。
三人で夏のコミケの新作を書き出した。次は1000部売ることを目標にしているのだ。
「明日の泊まりかったるいね」
「噂の送別会ですか?」
「そう、あーあ、泊まりの旅館で……忘年会が盛り上がる中、別室で愛し合う二人」
「いいね!そのシチュエーション。遠くに騒ぐ声が聞こえて」
「山科、俺は違う部にうつるけど、お前がずっと好きだった。」「辞めろよ、斉藤何すんだよ。あっ」
生きる糧である妄想が久しぶりに復活した。そう、私は恋愛妄想家。どんなに悲しいことがあっても妄想があれば生きていけるプロ妄想家、内田優美なのだり
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