12.どうしてこうなったのか

20/23
81人が本棚に入れています
本棚に追加
/179ページ
家に辿り着くといつものようにお母さんが玄関で出迎えてくれた。 「優美、おかえり。送迎会どうだった?」 まさか、「朝まで男と○○○していたよ」なんて言える訳がない。 「例年通りだよ」 笑って誤魔化す。 リビングには父さんが新聞を読んでいる。 「ただいま」「お帰り」 いつもの会話を交わすと、父さんがニコニコしながらこう言った。 「麗子ちゃんに結婚する話があるらしい。相手が優美と同じ部の」 「山科さん?」 父さんは、「そうそう」と自分の娘の結婚が決まったように嬉しそうだった。 まさかその山科さんの浮気相手が自分だなんて言える訳がない。 それにしても、私は何てことをしてしまったのだろうか。 「山科君はどんな男なんだ?川島が優美に聞いてくれって言うんだよ。ほら、女癖が悪いとか、そういうことは聞いたことないか?」 青天の霹靂、今ここで「女癖が悪い」「虐められていた」「実は昨日体の関係を持った」 そう言えば結婚を辞めさせ、山科さんを手に入れられる。 手足が変な汗をかく。 私は何をしてもどんな手段を使ってでも彼が欲しかった。彼のことが好きだった。 しかし、脳裏になぜか山科さんのお母さんの優しい笑顔が思い浮かぶ。 そして次に山科さんの部屋の「ビッグになる」という張り紙が浮かぶ。 父さんに告げた言葉は「優しくていい人だよ」だった。 父さんは満足そうに頷く。 「麗子ちゃんが選んだ人だもんな」 私も相槌を打った。 「麗子さんが選んだ人だもんね」 手足が震えている。 階段を登る足取りが重い。息が苦しくて仕方がない。 そう、私では彼の夢は叶えられないから
/179ページ

最初のコメントを投稿しよう!