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そして日曜日、あてもなく池袋を歩いていたら、衝撃的な場面を目撃してしまう。
侑士さんが女と歩いていたのだ。それもオタではない、普通の女と。
何だかすごく楽しそうだ。
打ち解けている感がある。
侑士さんに気づかれる前にこの場を去ろう。そう思った次の瞬間、侑士さんに発見されてしまう。
「優美さん!」
いけないものを見てしまった。
そうは思っていても、振り返ざるを得ない。
「どうも、こんにちは」
そう会釈すると、侑士さんは深々と頭を下げた。
「優美さん、本当に申し訳ないです。最近きた臨時職員の職場の女性が池袋を案内して欲しいというので、案内中です」
女性の方を見ると、明らかに私に敵意をもっている。
侑士さんも心配そうに女性を振り返った。
「侑士さん、私に遠慮せずにあっちの方へ行ってあげて下さい。お見合いだから、断りづらいのもあるかもしれません。でも、私たちは縁がなかったんですよ。今日お互いに両親にそう言いましょう」
侑士さんはまた深々と頭を下げた。
「お見合い中に他の女性と出掛けるような不誠実なことして、本当に申し訳ありませんでした」
「いや、悪いのは全て私です。返事もしないでダラダラ先延ばしで、侑士さんかそうなるのも当然です」
おまけに私は他の男と寝ているバカ女です。
そう心の中で謝罪する。
侑士さんは深々と頭を下げて女性の元へもどっていった。
また一人で池袋の街を歩く、悲しくはない、でも少し寂しい、けれどこれで良かったのだ。
また誰か違う人を好きになる日がきっと来るだろう。
不思議とそう思えた日曜日の朝。
「やっぱり侑士さんと結婚するのは無理、どうしても無理」
それだけ言うと、両親は悲鳴をあげて悲しんでいた。
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