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二
翌日。天馬は大学に行くと、すぐさま昨日の出来事を小学生の頃から付き合いのある友人「鳥丸崇矢」に話した。
しかし崇矢の反応は意外なものだった。
深夜に自宅に届けに行くなど常識がなっていない。そういう反応だった。
自分がその女の立場だったらまず、そのまま自宅に行かず警察に届けに行く。
そもそもは、そういった行動は、事件発生の可能性がある為、自ら自宅へ届けに行くという危険な行動を取らずに警察へ届けに行くようになっているのだ。
「天馬、お前だって思ったんじゃね?
深夜に女が一人なんて危ないってさ!」
「そりゃ、そうだけど・・・」
さらに崇矢はこう続けた。
普通の人であってくれ!包丁を持った暴漢とかじゃありませんように!などという恐怖心が少なからずあったのなら
無闇にドアを開けるのではなく、チェーンをするべきだったのではないか?危機管理能力があまりにも低すぎると。
そんな崇矢の指摘に天馬は「まったく頭に無かったよ」と照れくさそうに頭を掻きながら俯き気に答える。
「それと、その女・・・
気をつけた方がいいかもしれねぇぞ?」
「え?どういう意味?」
崇矢は、財布を届けに来た女が天馬の免許証を見たという事は、天馬の名前や生年月日、年齢から住所までありとあらゆる個人情報を知られてしまっている可能性があるのではないか?と危惧していた。
ストーカーなどになられたら後が怖いからだ。
「考えすぎじゃないかな?」
「考えろよ!つーか天馬!お前は
その女の名前・・知ってんのか?」
「いや・・名乗らなかったから・・」
「なら尚の事考えろよ!名前も知らない奴が
お前の個人情報知ってんだぞ?
普通に考えたらやばい状況だろ?」
考えすぎだという天馬に対し、崇矢はそのくらいの危機感は持っておけ。慎重になるに越した事はないのだからと釘を指す。
最後に何かあったら連絡しろ。力を貸すくらいはしてやると付け加えた。
そんな崇矢の忠告に対し、天馬は何かあったらお願いするかもしれないと返し、大学を後にした。
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学校帰りの天馬は、崇矢の忠告のせいで不安に苛まれていた。
偏執狂などとは無縁な人生を歩むとばかりか思っていた天馬にとって、それが身近になりつつあるというこの状況は恐怖でしかなかった。
「もぅ!崇矢があんな事言うから
余計な不安抱える事になったじゃんか!」
しかし考えたところで現状が変わる訳でない。
半ば諦め気味で、ふらって立ち寄ったスーパーの惣菜コーナーで弁当を物色していた。
しかし、まだ時間的に半額になっている時間では無かったようで、1割引にしかなっていなかった。
「まだ1割かぁ・・・
1割じゃなびかないなぁ・・・
せめて3割なら・・・・」
色々悩んだ結果、もうしばらくウロウロしたのちに再び惣菜コーナーを訪れ、安くなっていたら買おうと考え、その場を立ち去ろうとした瞬間
「天馬くんですよね?」
背後から、自分の名前を呼ぶ女性の声が聞こえ、振り返るとそこには、昨日自宅に財布を届けに来た女性が立っていた。
その女性を見た瞬間、天馬の頭の中では崇矢からの忠告がフラッシュバックしていた。
(まさか・・・本当に?)
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