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朝方、恵多は目を覚ました。
「!」
またもや寝落ちしたらしい。
そしてまた、凱に後始末をさせてしまっている。
…何が宇宙空間だよ…。
恵多は、頭を抱えた。
ちらりと隣をみると、凱は静かに寝ている。
無防備な寝顔すら美しくて、つい見惚れてしまう。
伏せたアッシュブラウンの睫毛が、驚く程長い。
「きれいだよなぁ…」
凱の口元には微かに笑みが浮かんでいる。
…楽しい夢をみてるのかな?
「…ん…」
凱が身動いだ。
「…恵…」
「…何?」
呼ばれて顔を近付けるが、反応がない。
夢の中?
「…恵…」
「?」
「…あんた…エロ過ぎ…」
「!?」
凱は目を閉じたまま、口をへの字に曲げている。
どうやら恵多は夢の中でも凱を困らせているらしい。
「…ごめんね」
凱の唇に自分の唇を押し当てたら、長い腕が伸びてきて、胸に抱き寄せられた。
胸の中で耳を澄ますと、頭上でスースーと規則正しい寝息が聞こえる。
「…ん…あんたあったかいな…恵…」
凱の腕の力が緩み、ずしりと恵多の肩にのしかかる。寝息が大きくなった。
また寝ぼけてた…?
クスクス、と恵多は笑った。
今日は、サラと間違えられなかった。
嬉しくて、凱の頬に頬擦りする。
夜が明けたら、今日が始まる。
当分ゆっくり会えないだろうから。
あと少しだけ、凱の温もりを感じていよう。
恵多は目を閉じて、体をぴたりとくっつけた。
ああ。
ずっとこのままでいられたらいいのになぁ。
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