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うつ伏せた恵多の上に、凱が覆い被さる。
「ん…っ」
ずっしりとした重み、触れた肌の熱さに背中がジンと痺れ、鼻から息が漏れる。
「恵。アレ持ってきたか?」
「…アレって?」
「前、あんたの家にあったやつ」
「…僕の家に…?」
何のことだろう?
恵多は凱を振り返った。
「俺の」
「…君の?」
「俺のサイズのゴム。あんたが買ってくれたやつ」
「ゴム?」
ゴムって何のゴムだっけ?
…ああ。
山口も言ってたな。
そうそう。
確かゴムって呼ぶんだよね。
それなら勿論持ってきている。
要するに、あれでしょ?コン…、コン…。
「っ」
頬がカァッと熱くなる。
勿論って、何だよ。
「コンコンって何だ?」
「…なっ、何でもない」
「なぁ」
アッシュブラウンの瞳が恵多の瞳を覗き込む。
「持ってきてねぇの?」
「あ…と…その…」
目を逸らして口籠ると、凱が続きを促すようにチラリと流し目を寄越した。
「…アレ…は、持って、きてる…」
おずおずと答えると、凱はいかにも満足げに微笑んだ。
だが、アレをどの箱に入れたのか、記憶が定かでない。
確か引き出しに仕舞っていたものは一段ごとに袋にまとめて…結局どの箱に…?
「ん?」
微かに電子音が聞こえる。
…リビングの方か?
凱と目が合う。
「あんたのスマホじゃね?」
「…」
二人でもう一度耳を澄ます。
本当だ。
恵多のスマホの着信音…しかもこれは…。
「っ!ブラウン教授だ!…あ」
諦めたのか、音が止んだ。
と、思ったら。
すぐ近くで電子音が鳴り出した。
二人の…密着した腰の辺りで音がしている。
凱が体を起こして、ジャージのポケットからスマホを取り出した。
「ブラウンのおっさんだ」
「!」
恵多に繋がらなかったから凱にかけたのだ。
『もしもし』
凱が電話に出た。
『あー。はい。荷物は下ろし終わりました。そうですね。渋滞もなかったみたいで割と早く到着しました。…ええ』
恵多の引越し作業の進捗を、あれこれ質問されているらしい。
申し訳なくて、恵多は所在なく俯いた。
「…」
その時、目の端に何かが映った。
「!」
凱の下腹部を凝視する。
凱の…凱の怒張がジャージのボトムを押し上げて、テントを形成しているではないか。
恵多のショボいテントとは訳が違う。凱のは衣服を突き破らんばかりの超大型テントだ。
恵多はごくり、と唾を呑んだ。
凄い。
中は、どうなっているんだろう…。
『あー。今からここにですか?』
「!?」
恵多はギョッとして凱を見上げた。凱もチラリとこちらを見返す。
ブラウン教授が今からここに来ると言っているのだ。
ブンブン、と恵多は慌てて首を横に振った。
『いや。玄関もダンボール箱でいっぱいなんで。ちょっと片付けてからでないと誰も中に入れないと思います』
凱が断ってもブラウン教授は簡単には諦めてくれないようで。
『いや。今日はちょっと…来て貰うのは無理ですね。明日以降でもいいですか?』
押しの強いブラウン教授と、冷静な凱の攻防は続く。
『え?今からそちらにですか?あー。もーちょい片付けないと俺らも外に出られないんで…。いや、五分、十分じゃ無理ですね。はい。そうですね…。三十分後でよければ。はい。伺います』
凱が折衷案を提示し、何とか受け入れてくれたらしい。
「ありがとう。助かったよ」
恵多が礼を言うと、凱は首の後ろをガシガシと掻いた。
「悪い。三十分しか引き延ばせなかった。…あんたのこれ、どうする?」
凱が恵多の下腹部を見下ろす。
「あっ」
恵多のジュニアは再び元気を取り戻し、盛大に先走りを溢していた。
「…てか、君のもだよね。どうしよう」
二人は互いの下腹部をじっとみつめた。
「…どっちもおさまりそうもねぇな」
「…うん」
「さっさと出すか」
「えっ?」
凱が黒いジャージごと下着を脱いだ瞬間、恵多は目を剥いた。
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