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「私の想像力もまだまだね…」
東雲はリビングのソファに身を沈め、ゆるゆると首を左右に振った。
「まさか五十嵐くんが巨根だったなんて…」
「俺もまぁまぁデカいっすよ」
荒井が胸を張ると、山口が頷いた。
「荒井くん、体も大きいもんねぇ。羨ましいよ」
「いやー。俺の場合はどっちも宝の持ち腐れっすから。山口さんのが凄そー」
「正直、俺あんまゴツくないよ。どっちかっていうと、長さで勝負かな…って、俺は一体何を言ってんだ」
山口が頭を抱える。
「ふぅん。お孫ちゃんは?」
東雲がキッチンカウンターの向こうに立つ凱を見上げた。
「…俺のことは放っといてくれ」
「あら、自信ないの?」
「いやいやいや、お孫さんは絶対デカいっしょ。そだ、今から銭湯行って、三人で比べっこします?」
荒井が目を輝かせる。
「ハァ?なに馬鹿なこと言ってんの。今は粗チンの比べっこしてる場合じゃないでしょ」
「なっ。東雲さん、ひどいっ。今粗チンって言ったぁっ」
凱はふぅ、と息を吐いた。
「…頼む。近所迷惑だからもうちょっと静かに話してくれ」
凱が淹れたてのコーヒーをマグカップに注いでカウンターに並べると、山口がさっと立ち上がって配り始めた。
「お孫ちゃん、私こんな苦いの飲めなーい」
「俺もムリっすー」
甘党からクレームが付いたため、引き出しからスティックシュガー、冷蔵庫から牛乳を出すと、山口が受け取って運ぶ。甲斐甲斐しい男だ。
ドーナツ屋で、何を訊かれてもしらばっくれていたら、業を煮やした東雲が「この目で確かめる」と言い出したのだ。
五十嵐恵多に断りもなく三人を家に上げてしまったが、今日のところは致し方ない。
東雲は、入って来るなり虫眼鏡で床や棚をくまなくチェックし、洗面所、トイレ、風呂の中まで覗いて「何もないわねぇ」と言って首を傾げた。
「やっぱりあれよね。証拠を探すにはベッドのある部屋が一番…」
凱の個室に入ろうとした東雲の腕を、掴んで止める。
「おい。俺の部屋に勝手に入るな」
「あら。なぁんだ、お孫ちゃんの部屋かぁ」
「いい加減にしろ。とりあえず座ってくれ」
凱が顎をしゃくると、東雲はしぶしぶリビングのソファに腰を掛けた。
「あんたらもどうぞ」
所在なくリビングに突っ立ったままの荒井と山口に声を掛けると、二人もしおしおとソファに移動し、今に至る。
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