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壁もピンク、天井もピンク。
ベッドカバーと枕、クッションも淡い桃色で、縁には白いフリルがあしらわれている。
二脚ある木製の椅子は、背もたれがうさぎの顔型だ。
やはりここは『らびっと』の関連施設なのでは…?
恵多はキョロキョロと部屋の中を見渡し、丸テーブルに視線を落とした。
『ガシャポン一回無料キャンペーン中』。
『おもちゃが出たら大当たり』。
ピンク色の文字が踊るチラシと共に、テーブルの上にはコインがひとつ。
隣にはみたこともないほど大きなガシャポン機が鎮座している。
…ここに入れるのかな?
コインを入れてダイヤルを捻ると、大きなカプセルがひとつ落ちてくる。
何だろ?
カプセルを開けると小さなパッケージが出てきた。
精密機器用の工具のような、超極細の、金属製の棒が三本並んでいる。
台紙には『ブジー』と書かれているが、そんな名前の工具は聞いたことがない。
首を捻ると、つつ…と髪から額に雨粒が伝い、頬から顎へと流れ落ちた。
シャツもパンツも雨に濡れ、体に張り付いている。
酔っているせいか道中はさほど気にならならなかったが、水を吸ったシャツの背中がひやりとした途端、抑えきれないくしゃみが口から飛び出した。
「っくしゅんっ」
浴室でシャワーの湯温を確かめていた凱が振り返る。
「おい、恵…」
「っくしゅんっ、っくしゅんっ、っくしっ」
返事をしたいのに、くしゃみが止まらない。
「全部脱げ」
つかつかと歩み寄り、凱は手早く恵多の衣服を脱がせた。
「ゆっくり浴びてこい。…倒れるなよ」
「っくしゅんっ」
くしゃみで返事をして、恵多は浴室へ向かった。
柔らかいシャワーの湯が、恵多の全身に降り注ぐ。
恵多がのぼせて倒れないよう、湯の勢いと湯温をゆるめに設定してくれたようだ。
…優しいなぁ。
でも大丈夫。
僕に何かあっても、彼はすぐみつけてくれるはず。
何故ならこのホテルのお風呂はガラス張りで、ベッドのある部屋側から丸見えなのだ。
…何でわざわざガラス張りにしたんだろうな。
僕みたいな酔っ払いのためだろうか。
それなら非常に有り難い。
…有り難いが、凱と何度も目が合って、少し…いや物凄く、恥ずかしい。
「…あれ?」
気付けば凱はまだ濡れた衣服を着たままだ。
恵多はゼスチャーで、服を脱いで入ってくるよう指示した。
しかし、凱が迷いをみせる。
はやくはやくと恵多が必死に手招きすると、凱はやっと服を脱いで浴室に入ってきた。
筋肉質でずっしりとした凱の前腕を掴んでシャワーの中に引き入れる。
「ん?」
何かが鳩尾に当たった。
見下ろすと、凱のコブラが鎌首をもたげている。
「あ、あれ?何で…」
凱が、フーッと息を吐く。
「さっきから、あんたがエロ過ぎて…」
「僕?僕の何が…むぅ」
いきなり唇で口を塞がれた。
「んんっ、んっ」
凱のキスが激しくなって、恵多はそれ以上、何も話せなくなった。
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