<ホラーEND>君は蜃気楼の中2

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<ホラーEND>君は蜃気楼の中2

そして俺は最後の本棚の通路へ視線を向けた。 だけどそこで俺は思わず立ち止まった。多分、目を瞠り口を半開きにしてたと思う。 そんな俺が見つめる先にはレジがあった。まぁそれはいい。予想通り店の右奥にレジがあっただけ。しかしだ。問題はそこに座っていた店長。俺は勝手におじさん店長を想像していた。 だけどそこに座り本を読んでいたのは、美人なお姉さんだった。艶のある長い黒髪に男の俺でも一目で分かるほどきめ細かい白い肌。首には太目のチョーカーを付けていた。少し似合わないとも思うがそもそも俺にファッションセンスがないだけかもしれない。 とにかくその綺麗な顔立ちの横顔を見た瞬間、俺は恋に落ちた。それは確かな感覚で初めてこの感覚を味わった人が『落ちた』という表現をした理由が分かる。 俺がすっかり見惚れているとお姉さんは視線に気が付き顔を上げた。 「あっ。いらっしゃい」 多分、話しかけられなければ永久に眺めていただろう。 だけどその聞いているだけで胸を締め付ける美声に何か返事をしなければと我に返った。ちなみにいうとこの美声にかかれば『いらっしゃい』という業務的な言葉でさえ好きな人に下の名前で呼ばれたような気持ちにさせてくれる。いや、実際そうなった。 「ど、どうも」 動揺を隠しきれず変な感じで返してしまった。変な奴って思われてないかそれだけが気がかり。 「何か探してるの?」 「い、いえ。ただここんなところに本屋があったんだなぁと思って」 「少し奥にあるからね」 そう言いながらニッコリと笑うお姉さんを見て俺はあることに気が付いた。全く汗をかいてない。 「ん? なに?」 こんな暑いのにも関わらず1滴も汗をかいていないことは灼熱地獄から来た俺にとっては信じられないこと。そのせいで思わず見つめてしまった。まぁ彼女が美人過ぎるということもあるが。
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