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<ホラーEND>君は蜃気楼の中4
すると柔らかで冷たいお姉さんの手が俺の手を本と挟み込む。思わぬことにドキッとしてしまう。
「あまり乱暴に扱わないであげてね」
「もちろんだす」
ヤバい。やってしまった。まだ残っている手が触れた時の動揺で噛んでしまった。絶対笑ってるよ。
「よろしくね」
だけどお姉さんは何事もなかったようにしていた。きっと気づかないふりをしてくれてるんだろう。ますます好きになってしまう。
それから少し話をしてから俺は家に帰った。
「必ず返しに来てね。来なかったら取りに行っちゃうかも」
店から出る俺にお姉さんはそう言った。それもいい。と思ったがそれは心の中だけに留めておいた。腹が減ってなければもう少しいたかったが、食欲は強い仕方ない。
そしてその日の夜、寝る準備を済ませベッドに寝転がりながらあの本を開く。
「『不幸な女』すごい題名だな」
本はあまり分厚くなかったこともあって俺でも最後まで読めた。
その内容は、主人公の女性が長年の夢だった本屋を開いたけど愛していた男性に裏切られ借金を背負わされ最後は本屋で自殺してしまうというもの。
「え? これで終わり? バッドエンドじゃん」
後味が悪すぎる。でもあのお姉さんがお気に入りって言ってたからなぁ。
「あっ! そうかきっと下巻があるんだ。だからまずはこれを読ませて続きを気にならせた俺に下巻を買ってもらうということか。あのお姉さん商売上手だなぁ」
当然、ここまできたら最後まで読み切りたいと思った俺は明日、本を返しながら下巻を買いに行こうと決めた。
「わざと忘れてまた次の日に会いに行く口実にするか? いや、借りた物はちゃんと返そう」
そして俺は次の日の部活終わりにあの古本屋に向かった。だけど、
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