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<ホラーEND>君は蜃気楼の中5
「閉まってる」
定休日かな? なら仕方ない。また明日こよう。そして次の日。
「また閉まってる」
2日連続休みたくなる日だってあるある。また明日こよう。
だがしかし。それから1週間ずっと古本屋は閉まっていた。
「あれっ? どうしたんだろう」
少し心配だ。もしかしたらお姉さんに何かあったのかも。
「おやおや。こんなところでなにしとるんだい?」
若いとは言えない声に振り返るとそこには数本の花を持ったおばあちゃんが立っていた。
「ここの古本屋さん最近開いてないですけど、どうしたんですか?」
もしかしたらこのおばあさんが何か知ってるかもしれない。
「ここは数年前から閉店してるよ」
「え?」
このおばあさんはボケているのか? 本気でそう思った。
だって1週間前俺はここであのお姉さんと出会ったのだから。
するとおばあさんは歩みを進め店の前にお花を置いた。
「ここの店主はそれはべっぴんさんだったんだけどねぇ。悪い男に騙されて借金を背負わされたんだ。お店の方もあんまりだったらしくてそのうち首が回らなくなってしまってついには自ら命を絶ってしまったんじゃ。可哀想に」
衝撃過ぎて言葉も出なかった。俺が固まっている間、おばあさんは目を瞑り両手に刻まれた皺を合わせ祈っていた。
「これも何かの縁じゃ。お前さんもたまには祈りに来てやってくれ」
顔を上げたおばあさんは俺の顔を見てそう言うとその場を去って行った。
それからどうすればよいか分からなくなった俺は、確かにお姉さんから借りた本を手に家へ帰った。椅子に座り机に置かれた本をただただ眺める。
「確かに本屋に入ったし、確かにお姉さんからこの本を借りた。なのに数年前に死んだ? じゃああれは……」
その時、悪寒が走った。
勝手に背筋が伸び全身に鳥肌が立つ。
「返してくれないから取りに来たよ」
耳元で囁かれた声は確かにあのお姉さんのものだった。
俺は思わず振り返った。
※こちらはもうひとつ<happyエンド>に続きますが、そちらは珊瑚の本屋さん(短編集)にてどうぞ。
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