(〇一)

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 と、自分の行為に驚き恐縮する男に俺は、来客用の椅子を勧めた。  男は恥ずかしそうに中古で安物のソファに腰掛けた。 「まずは、お互いに自己紹介をしませんか?」  俺は机の抽斗から名刺を取り出すと、応接テーブルを挟んで男が座ったのと同じ、中古で安物のソファに座りながら名刺を渡し、 「当事務所の所長兼調査員の不動と言います」  と、言った。  俺の名刺には、『不動探偵事務所所長 不動研作』と事務所名と住所、肩書と名前、そして事務所と携帯の電話番号とEメールのアドレス・・・・とまあ、当たり前のことが記載されている。  男はあたふたと名刺を取り出し、 「フリーのSEをしています、武藤と言います」  と、俺に差し出す。  俺と武藤は互いに不慣れな感じで名刺交換をした。  武藤の名刺には『ムトウ・システムサービス 代表取締役社長 武藤要次』と社名と名前・・・・などなど、俺と同じような内容が記載されている。  唯一、俺と違うのは、俺の名刺の裏面は白紙だが、武藤の名刺の裏面には、いくつかの業務内容が記載されている。
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