8人が本棚に入れています
本棚に追加
俺の知る限りでは、武藤や莉緒のような付き合いをする男女は極力、本名などプライベートなことは明かさないものだからだ。
「なんか、根拠があるんですか?」
「はい・・・・」
と、武藤は再び歯切れが悪くなった。
「笑わんでくれますか・・・・」
武藤は俺を見て不安そうに訊くので頷いた。
「莉緒は闇金に借金をしてまして、その一部を私が催促無しのある時払いで立て替えたんです」
「一部って、お幾らですの?」
「約三〇〇万です」
「それは、また・・・・」
俺は笑うよりも驚いた。
世間ではネットニュースなどで、こういった出会い系で会った女や風俗嬢に入れ込んで、大金を貢ぐ話はヤマほど聞いたし、その殆どは女が姿をくらませて、男は泣き寝入りといったパターンの話をよく見るからだ。
武藤は俺のそんな内心の驚きをよそに、話を続ける。
「不動さんの言いたいことはわかりますし、勿論、私もそんな大金をホイホイ貸したりはしません。私は貸す代わりに、彼女に身分証明の提示を求めました」
武藤はそう言いながら携帯を取り出して操作すると、画面に一枚の写メを表示して、テーブルに置いて俺にその携帯を見せた。
最初のコメントを投稿しよう!