(〇一)

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「はあ・・・・とにかく私は、この写メのように彼女の本名や現住所、それに実家の住所も教えて貰った上で、お金を貸したんです。それに、毎日、LINEで連絡を取る約束もしていました。ところが、この三日間、音信不通になったんです」  LINEとはメールに変わる、今主流の通信アプリのことである。 「連絡が取れなくなった?」 「はい」 「既読はついてるんですか?」  既読とは、メッセージを送った相手がそれを読むと、読んだという印がつくことをいう。 「つきません」  と、武藤が小さく首を横に振る。 「この大阪や兵庫の住所には、行ってみたんですよね?」  俺は当然行ってる前提で訊いた。 「行ってません」  と、武藤の返事は意外なものだった。 「なんでです?」 「なんというか、もし行って彼女に何も無く、迷惑だけかけるようなら、マズいかなって思いまして・・・・」 「はあ?」  何を言ってるのだ、この男は・・・・ 「いや、あのですね、武藤さん。あなたは約束の連絡が途絶えたのは、何かあると思ったからでしょ? だったら、堂々と家に行けばええやないですか」
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