ジャンヌ ド ヴァロワ

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ジャンヌ ド ヴァロワ

「いいかい?君は今日からフランス人の養子として大陸 上海のフランス人居住区に住む貴族の養子となる。 名前はジャンヌ ド ヴァロワだ。なれないだろうが慣れてくれ。」 「え、良輔さんのお嫁さんというていは・・・?」 「それは日本出国時に日本国に提出する偽造旅券だ。上海は無法地帯みたいなもので世界各国がひしめき合う土地だ。上陸し、君の旅券はフランス領事館にて養子縁組手続きをし、ジャンヌとなるのだよ」 「っていっても私、フランス語なんて話せないよ」 「君の年齢でもいいから養子が欲しいという貴族がいる。金はそこまでないが、なくはない家庭だ。子がおらず上海のフランス政府機関の人間だ。フランス居住地の屋敷で公務をしている。君はそこでフランス語と英語、中国語も勉強するんだ。いいね。 」 「はい、でも良輔さんが教えてくれるんでしょ?」 「悪いが僕は日本政府でも腫れ物のようで、2個も女学校に行ったが門前払いされてね、女学校中退の身だ。学歴はないに等しい。僕は何か国語かは話す事ができるが教える事はできないから、語学教師はネイティブの教師に、歴史や数学簿記については留学中の帝大生を家庭教師として雇った。女性だから安心したまえ。」 「でもヴァロワ家にはいつ?」 「君は施設で育っていたトラウマで言葉が話せないていにしてある。一か月間でフランス語のあいさつ程度はマスターしてくれ。君はどうみても日本人には見えないし、西洋人だから大丈夫だ。」 今まで遊郭では混血児だの、日本人じゃない癖にだの、小さいころからいじめられてきた。 それが今生かせるときがくるとは。 霞澄姫は少し心配ながらも遊郭で受けた待遇よりかはましだろうと安堵する。 「さぁ、船の時間だよ。船の時間、楽しく僕が軽めのフランス語の手ほどきをするから気を張らずに僕のお嫁さんとして乗船しよう。長い道のりだけど、1等の部屋だから安心して過ごせるはずだ」 「ありがとうございます。」 「さぁ、行こう。新しい世界の幕開けだ!」
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