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「猫よ。三毛猫。お父さんが昔飼ってたんですって」
「俺が小さい時から家にいたんだ。あの頃は放し飼いが当たり前で、ミケも昼間はどこかにいっていたが、夜には必ず家に帰って来た」
「三毛猫にミケってセンスないわね」
「もう、お姉ちゃんは。そのミケはすごいのよ。ね、お父さん」
「ああ、俺の実家は山の中だろ?あの頃近くに小学校がなくて、隣の地区まで通っていたんだ。片道一時間」
「ええ?毎日往復二時間歩くの?信じられない」
「でもさらに凄いのよ。ね、お父さん」
「その行き帰りをミケがずっと一緒についてきてくれるんだ」
「いいなー。オレも猫飼いたい」
「そうよね。その話はまたあとで。ね、お父さん続き」
「ミケは俺が高校生の頃、山で死んでいるのを、山菜取りに行ったばあさんが見つけて家の裏に埋めたんだ」
「ちょっと、なんで死んだのよ?」
「老衰だろうって。猫は死ぬ時姿を消すって言われているんだ。たまたま、ばあさんが見つけたのも奇蹟だな」
「ミケだって何でわかったの?違う猫かもじゃない?」
「ミケは毛皮の模様が独特だったんだ。白、黒、茶色が入り混じって派手な猫だった。額に三日月模様に黒い毛が生えていた。すぐに分かったさ」
「へぇー、三日月模様?カッコいいね」
「それでだな、昨日、姉さんから初めて聞いたんだが、修君が亡くなる間際に病院で話してくれたそうなんだ。一緒に小学校についてきてくれた猫の話」
「ミケなのよ。それが。びっくりでしょ?私それ聞いて鳥肌立っちゃったわよ」
「どうゆうこと?ミケはとっくに死んでいるんでしょ?」
「ミケの幽霊みたいだ」
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