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家に帰ると両親はいなかった。代わりに姉が帰って来ていた。
姉は、この田舎町から百キロ離れた市街地で一人暮らしをしている社会人。たまの週末に帰ってくる。
母と電話中であった。
「法事で東京にいるの?従兄弟のお兄さん?あー、その人の十三回忌なのね。わかった。うん。」
「ただいまー」
弟も帰ってきた。
「あれ?お母さんたちは?」
「従兄弟のお兄さんの法事だって。ってあんた、話聞いてるはずでしょ?」
「あー、そう言えば留守番お願いって言われたかも。従兄弟のお兄さんなんていたっけ?」
「あんた小さかったから覚えてないのね。私のいくつ上だったかな。修君って男の子がいたの。お父さんのお姉さんの子供。病弱でよく入院していたから、私も一回しか会ったことないんだけど」
「東京の人なの?」
「旦那さんが東京の人みたい。伯母さんは修君と、一時期おばあちゃんの家にいたみたいよ。こっちの空気のほうが綺麗だからって。亡くなったのもこっちの病院みたい」
「いくつの時に亡くなったの?」
「十三回忌ってことは十二年前、私が十二歳で、二つか三つ上だったから十五、六歳じゃない」
翌日、東京から帰って来た両親は、そこでの意外な話を聞かせてくれた。
「あの話はびっくりしたわね」
「お前より俺のほうが驚いているよ。今でもまだ不思議な話だ。今度お墓参りに行くかな」
「実家の裏に眠っているの?」
「いったい何の話?」
興奮気味の両親の話が見えず、痺れを切らした姉が口を挟んだ。
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