ACT 2

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「ここを出るのだ」 頭で思うより先に、大きく鼓動が跳ねた。 だって、その声は。 「……ま、つせ……くん」 鎖がいくつも絡まったハードな黒いブーツに、縦横無尽にチャックが付いている細身の黒いパンツ。シャツは黒と赤の左右色違いの大きめノーカラー。そして珍しく、黒い帽子を被っている。カンカン帽よりツバが短く上を向いていて、リボンはシャツと同じ赤。 相変わらず個性的過ぎる、目立つ格好をしてるなと思う。指摘したいけど、丸眼鏡の向こうの眼差しは、初めて会ったときみたいに不機嫌そうで、すぐ傍に立っているのに、話しかけられたのに、すべてを拒まれているように感じる。 「2人に付き合う」 「……な、に……付き合うって」 とにかく突然過ぎて、言いたいこと、聞きたいコトが沢山あったのに上手く聞けない。ただ言われたことしか繰り返せない。 「早くするのだ。気付かれている」 飛んだ松瀬くんの視線を追うように店内へ向けると、何人かがスマホをこちらに向けていた。本当だ。全然、気付かなかった。 「さあ、早く」 松瀬くんは目配せしたのと同時に歩いていくから、慌てて金森くんと追いかける。会計は終わっていたみたいで、そのまま出ても何も言われなかった。 いつの間に? 一体、いつからここにいたの? だいたい、どうしてここに? 付き合うって何? 同じ疑問が、ぐるぐる、ぐるぐる回る。 「乗るのだ」 道路の端に止めてあった――前に大きくGMCとある大きな赤い車に誘導され、金森くんと一緒に後部座席に乗り込む。 するとすぐにエンジンを掛け、カメラを片手に出て来た人達を振り切るように走り出した。
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