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ポプラ社より「少年探偵 江戸川乱歩全集」全十五巻刊行
ここで登場するのがポプラ社である。
ポプラ社は戦後、創立された児童書専門の出版社だった。
次章で詳しく述べるが、戦後、乱歩の通俗長編を児童向けにリライトして刊行。莫大な利益を挙げていた。
光文社の「少年探偵 江戸川乱歩全集」と共に乱歩に多額の収入をもたらしたので、光文社と共に乱歩と関係が深かった。
ポプラ社で編集に携わり乱歩の通俗長編のリライトに携わっていた秋山憲司は「少年探偵・江戸川乱歩」シリーズの第六巻『地底の魔術王』(1998年 ポプラ社)の解説『乱歩先生のこと』で次のように述べる。
<(ポプラ社で刊行された乱歩の本が)どれもよく売れたので乱歩先生はたいへん喜んでくれました。
一方、光文社の『少年探偵 江戸川乱歩全集』は、1962(昭和三十七年)になると、なぜか書店の店頭から姿を消してしまいました。このことを乱歩先生にお話しすると、早速、光文社に問い合わせて下さいました。すると「当分出版の意思はないので権利を譲ってもよい」という返事だったので、〖少年探偵〗シリーズはポプラ社から引き続き発行されるようになったのです>
秋山によれば、神吉から
「当分出版の予定はないので、ポプラ社で刊行したいのなら版権を譲渡する」
と言われたという。
光文社はあっさり自社のドル箱を放棄したのである。
神吉晴夫が光文社の社長に就任するのは、それからまもない1965年のことである。
こうして1964年(昭和三十九年)七月から十一月、ポプラ社版「少年探偵 江戸川乱歩全集」全十五巻が刊行がされた。
乱歩にとって生前最後の全集となった。
光文社と違うのは順番が発表順になっておらずバラバラになっていることである。そのうえ、勝手に題名を変えている作品もある。
私事になるが、私は母の実家の倉庫でボロボロになった「少年」を探し出し、『虎の牙』を読んであまりの面白さに是非全文を読みたいと全集の目録を探したが、『地底の魔術王』と変更されていたため見つからず当惑したものだった。
1964年に刊行されたポプラ社版「少年探偵 江戸川乱歩全集」全十五巻の最終巻『塔上の奇術師』の表紙。怪人二十面相が最初から登場。↓
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