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【資料】ポプラ社版「少年探偵 江戸川乱歩全集」30『大暗室』
ポプラ社から刊行された児童向けリライト『大暗室』は1956年十二月。
ポプラ社が刊行していた「日本名探偵文庫」二十一巻として刊行されたのが最初である。その後も装いを変えて刊行され、最終的に「少年探偵 江戸川乱歩全集」第三十巻に収録された。
![cd224c02-5acf-44cc-bd05-102dfa980865](https://img.estar.jp/public/user_upload/cd224c02-5acf-44cc-bd05-102dfa980865.jpg?width=800&format=jpg)
<はじめに
この『大暗室』の原作は、おとなの小説として書いたので、少年読物としては不適当なところが多かったのだが、少年雑誌で、これを少年向けの小説になおして発表したいとの希望があり、友人武田武彦君におねがいして、少年むきに書きなおしてもらったのである。お話のすじは、だいたいそのままにして、残酷な個所をけずり、冒険的な部分だけをのこし、原作には出ていない少年少女を登場させるなど、少年読物として面白いものに書きあらためて、少年雑誌に連載したものである。
こんど、これを一冊の本にして出すについて、ひとこと、この小説のなりたちをしるし、筆者武田武彦君の労を謝するものである。
江戸川乱歩>
この「はじめに」の文章は、「日本名探偵文庫」から変わっていない。
ところが1990年代末に刊行された『大暗室』では、作者の名前が「武田武彦」から「氷川瓏」に書き替えられていたと複数の証言が得られた。
間違いなく名張市立図書館より刊行された『江戸川乱歩執筆年譜』の影響であろう。
乱歩名義の文章が、いつのまにか書き替えられていたのである。(非公式だが当時の事情を知る人から、『大暗室』の「はじめに」は乱歩の筆になるものとお聞きした)
雑誌に連載するなら、常識的に考え、改作者と最初に顔合わせはするだろう。しかも武田武彦は旧知の人物である。
「はじめに」で触れられている少年雑誌というのは小学館の「小学六年生」で、1956年(昭和三十一年)四月号から翌年三月号まで連載された。
連載完結を待たずに急いで単行本化されたのが十二月。
連載開始より一年も経っていないのに、乱歩が少年向けに改作した人物を間違えたとでもいうのだろうか?
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