江戸川乱歩の一般向け作品の児童向けリライトの基礎を築いた武田武彦

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 武田武彦(たけだたけひこ)は戦後、ミステリー小説の専門誌「宝石」の編集長を務めるなど、日本のミステリー小説の発展に大きく貢献したにも関わらず、現在では名前を知らない人が多い。  この人がいなければ、ポプラ社は乱歩の通俗長編の児童向けリライトを刊行することを思いつかなかっただろう。  その後の、乱歩の児童小説での活躍も違ったものになっていた可能性が高い。  武田武彦の簡単なプロフィールを偕成社の「名作冒険全集」第三十三巻に収録された『名探偵ホームズ まぼろしの犬』(1968年)の巻末「先生のご紹介」を読んでみよう。この作品は「シャーロック・ホームズ」シリーズの『バスカービル家の犬』を武田武彦が児童向けにリライトしたものである。 <1919年東京に生まれ。早大政経部卒業。「宝石」元編集長。日本探偵作家クラブ会員。「薔薇悪魔」「世界少年隊」その他、探偵小説、ラジオドラマの著作多し>  この経歴でも分かる通り、武田武彦は早稲田大学の卒業で、乱歩の後輩だったのである。  『名探偵ホームズ まぼろしの犬』の口絵。原作にはない犯人追跡と最期、ヒロインの危機がクライマックスとして描かれる。挿絵は柳瀬茂。  原作では語り手であるワトソンは、この全集の他のホームズ物と同じく、少年という設定。文章も三人称に変更されている。人間関係は整理され、犯人が愛人を利用して被害者をおびき寄せるプロットは削除されている。  他に犯人が犯罪成功後、どうやって莫大な財産を相続するつもりだったかなど省略された部分があるが、全体的には原作に忠実なプロットとなっている。↓8e261c15-ff34-4744-9010-c1fa35a37da6  
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