口絵・雑誌連載『大暗室』

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 現在、ポプラ社から刊行された江戸川乱歩の児童向けリライト『大暗室』は、ミステリー作家の氷川瓏(ひかわろう)が、リライトしたとされる。  例えば名張市立図書館刊行の『江戸川乱歩執筆年譜』は、ハッキリ氷川瓏の代作と記している。  武田武彦がリライトして「小学六年生」に連載した『大暗室』とは別の作品だというのだ。  乱歩は武田武彦の改作に不満で、単行本化にあたっては、武田ではなく氷川瓏を指名したと推測する本まである。例えば中川右介『江戸川乱歩と横溝正史』、新保博久の光文社版「江戸川乱歩全集」の解説……  事実はどうなのか?  武田武彦の脚色した雑誌連載版では、明智は「三国」という船員に化けて初登場し、後に悪人、大曽根の前でその正体を明かす。  雑誌連載版より後に氷川瓏がリライトした単行本は、「三国」という名前から明智が大曽根に正体を明かすシーンまで、武田武彦の連載と全く同じストーリーが展開する。  そもそも江戸川乱歩が書いた原作には、船員の「三国」も明智小五郎も登場しない。明智が大曽根に自分の正体を明かすシーンもない。  間違いなく氷川瓏は、武田武彦の連載を下敷きにリライトしているのである。  なぜ雑誌連載と単行本が別の作者の別の作品という結論になるのか? ↓ポプラ社から刊行された江戸川乱歩作品の児童向けリライト『大暗室』 a7027bb2-f042-436b-93fd-617787fef641
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