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江戸川乱歩の長編の児童向けリライトが定着
武田武彦がリライトした『黄金仮面』の成功が契機となり、その後、ポプラ社では江戸川乱歩の通俗長編の児童向けリライトを積極的に刊行するようになる。
1954年(昭和二十九年)十一月に児童向けリライト『人間豹』を刊行。『黄金仮面』に続く成功を収める。
1955年(昭和三十年)よりポプラ社は、「日本名探偵文庫」を刊行。最終的には二十五巻となった。
角田喜久雄、海野十三、南洋一郎、大下宇陀児、甲賀三郎島田一男、水谷準ら日本を代表するミステリー作家や児童作家のミステリー小説が網羅されている。
一般向け作品の児童向けリライトと最初から少年向けに書き下ろされた作品が混在している。
海野十三や甲賀三郎は故人であったから、一般向け作品は、誰か別の人間がリライトしたと思われるが詳細は不明である。
売り物はもちろん江戸川乱歩の作品である。乱歩作品を刊行することで話題を呼び、他の作家の作品も売ろうという戦略である。
乱歩の作品は第一巻『呪いの指紋』(原作『悪魔の紋章』 1955年八月刊)、そして第九巻が〖黄金仮面〗で1956年(昭和三十一年)二月の刊行。
続けて第十二巻『赤い妖虫』(原作『妖虫』 1956年二月刊)、第二十一巻『大暗室』(1956年十二月刊)と全部で四作が収録された。
乱歩については全て一般向け作品の児童向けリライトである。
全集の内容を下に紹介する。
1「呪いの指紋」江戸川乱歩 著:1955年八月
2「黒百合城」大下宇陀児 著:1955年八月
3「深夜の市長」海野十三 著:1955年九月
4「たそがれの悪魔」角田喜久雄 著:1955年九月
5「恐竜の笛」水谷準 著:1955年十月
6「姿なき怪盗」甲賀三郎 著:1955年十一月
7「猫目博士」島田一男 著:1956年四月
8「赤いトランプ」南洋一郎 著:1957年三月
9「黄金仮面」江戸川乱歩 著:1956年二月
10「恐怖の口笛」海野十三 著:1955年十二月
11「ゆがんだ顔」角田喜久雄 著:1956年一月
12「赤い妖虫」江戸川乱歩 著:1956年二月
13「恐怖の花篭」海野十三 著:1956年四月
14「虎の王冠」水谷準 著:1956年五月
15「覆面探偵」久米元一 著:1956年六月
16「黒い天使」甲賀三郎 著:1956年七月
17「湖底の魔都」大下宇陀児 著:1956年七月
18「大金塊の謎」海野十三 著:1956年十月
19「洞窟の魔人」南洋一郎 著:1956年十一月
20「暗黒城の怪宝」久米元一 著:1956年十二月
21「大暗室」江戸川乱歩 著:1956年十二月
22「悪魔の使者」海野十三 著:1957年四月
23「赤い靴の秘密」島田一男 著:1957年五月
24「魔の宝石」水谷準 著:1957年八月
25「魔法少年」大下宇陀児 著:1957年九月
売れ行きが好調なのは江戸川乱歩で、ついにポプラ社は、江戸川乱歩の通俗長編の児童向けリライトからなるシリーズを刊行する。
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