ポプラ社より刊行された乱歩作品の児童向け改作者は誰か?

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ポプラ社より刊行された乱歩作品の児童向け改作者は誰か?

 これまで明らかにしてきた通り、1953年よりポプラ社が続々刊行し、光文社が独占していた「少年探偵団」シリーズに対抗するほどの人気となったのが、江戸川乱歩の一般向け作品の児童向けリライトのシリーズである。  乱歩の信頼を勝ち取り、遂には光文社が独占していた「少年探偵団」シリーズの出版権を譲渡され、1964年より新たにポプラ社版「少年探偵 江戸川乱歩全集」を刊行する原動力となった。  児童向けリライトも「少年探偵団」シリーズに劣らない人気を誇り、ポプラ社のドル箱となった。  児童向けリライトは江戸川乱歩ではなく、別の作家が行っている。  誰が行ったのか、一部を除いておおよそのことは分かっている。  下記がポプラ社版「少年探偵 江戸川乱歩全集」に収録された児童向けリライト全巻のリストである。数字が巻数である・ 27 .黄金仮面  28.呪いの指紋(原作『悪魔の紋章』) 29.魔術師 30.大暗室(原作に明智は登場せず。名前のみ出てくる) 31.赤い妖虫(原作『妖虫』 原作に明智は登場せず) 32.地獄の仮面 33.黒い魔女(原題『黒蜥蜴』) 34.緑衣の鬼(原作に明智は登場せず) 35.地獄の道化師(短編『心理試験』も収録) 36.影男 37.暗黒星(短編『二銭銅貨』も収録) 38.白い羽根の謎(原作『化人幻戯』) 39.死の十字路(原作『十字路』 原作に明智は登場せず) 40.恐怖の魔人王(原作『恐怖王』原作に明智未登場 短編『黒手組』収録) 41.一寸法師 42.蜘蛛男 43.幽鬼の塔(原作に明智登場せず) 44.人間豹 45.時計塔の秘密(原作『幽霊塔』 原作に明智は登場せず) 46.三角館の恐怖(原作に明智は登場せず)  上記のうち、『黄金仮面』『人間豹』『大暗室』以外の作品については、乱歩が怪奇、幻想作品の後継者と期待していた氷川瓏が単独で行った。  氷川瓏は乱歩名義で刊行された海外ミステリーの児童向けリライトも行っている。  さらに乱歩がファンだった黒岩涙香(くろいわるいこう)再評価のため、小山書店より刊行された『死美人』(1956)では黒岩涙香が翻案したボアゴベー原作の『死美人』を口語体に訳している。(なお原文は文語体だが、もともと大衆読者を相手にしていたのだから、決して難しい文章ではない)  氷川瓏については『知られざる江戸川乱歩の世界』でも取り上げたが、戦後の乱歩と非常に関係の深かった人間である。  実力のある作家であるにも関わらず、現在では殆ど知られておらず、エブリスタ投稿者の中でも、作品を読んだ人は僅かかと思う。  『黄金仮面』については、「宝石」の元編集長の武田武彦が「探偵王」に連載した児童向けリライトを元に、武田自身が単行本にまとめた。  ここで問題になるのが『人間豹』『大暗室』の二作品である。
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