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ポプラ社版『人間豹』『大暗室』の作者
最初に私が資料を調べて確認した結論を記しておく。
ポプラ社から刊行され、最終的に「少年探偵 江戸川乱歩全集」に収録された児童向けリライト『大暗室』『人間豹』の改作を行った人物についてである。
〇『人間豹』
「少年少女 譚海」(戦後創刊された雑誌。当初、文京出版の刊行だったが、その後出版社の名前が変更。1954年三月号で終刊)に1952年(昭和二十七年)九月号より1953年(昭和二十八年)八月号まで連載された『人間豹』(原作・江戸川乱歩 脚色・武田武彦 画・成瀬一富)を氷川瓏が編集。
乱歩の原作を大胆に変更した設定やストーリー、文章などは、ほぼ武田武彦の連載小説と変わらず。
(「少年少女譚海」は四月号、第八回まで連載したところで五月号、六月号は休刊。七月一日付で「少年少女譚海」(夏季特別号 七月号)が刊行されるが、出版社は譚海出版社名に変更。七月号、八月号と続き、合計十回で終了。
『雑誌で読む戦後史』(木本至 1985 新潮選書)では五月号で休刊となり、八月号から再刊されたと説明されているが誤り)
●『大暗室』
小学館「小学六年生」に1956年(昭和三十一年))四月号~1957年(昭和三十二年)三月号まで連載された『大暗室』(江戸川乱歩・原作 伊勢良夫・絵 武田武彦・脚色)を氷川瓏が編集。
乱歩の原作を大幅に変更し、明智小五郎、小林少年と怪人二十面相を名乗る大曽根の対決とした設定やストーリー、文章などは、ほぼ武田武彦の連載小説と変わらず。
江戸川乱歩自ら書いた「はじめに」でも、ハッキリと武田武彦が改作した雑誌連載をまとめたものと明記されている。
みなさんが乱歩についての本やブログで、ポプラ社の児童向けリライトを参照すると、それぞれ記述に違いがあるはずである。
結論を云うと上記が正しいかと思う。
名張市立図書館が刊行した『江戸川乱歩執筆年譜』(監修・平井隆太郎 中島河太郎 1998)では次のように書かれている。
<人間豹 『人間豹』ポプラ社 (1954年十一月)三十日
←代作(氷川瓏)。昭和9・10年の同題作品を少年向けに書き替え>
<大暗室 『大暗室』日本名探偵文庫21 ポプラ社 (1956年十二月)三十日
←代作(氷川瓏。乱歩は「武田武彦」と記録)。昭和11・12年の同題作品を少年向けに書き替え>
非常に申し訳ないが、武田武彦の作品を原案にしたことが全く触れられていないので、下記のようにするべきかと思う。
<人間豹 『人間豹』ポプラ社 (1954年十一月)三十日
←代作(雑誌「少年少女 譚海」に連載された武田武彦のリライト『人間豹』を氷川瓏が編集)。昭和9・10年の同題作品を少年向けに書き替え>
<大暗室 『大暗室』日本名探偵文庫21 ポプラ社 (1956年十二月)三十日
←代作(雑誌「小学六年生」に連載された武田武彦のリライト『大暗室』を氷川瓏が編集)。昭和11・12年の同題作品を少年向けに書き替え>
そもそもポプラ社版の児童向けリライト『人間豹』『大暗室』は、両作品とも江戸川乱歩の原作と大きくかけ離れているが、単行本は、武田武彦が雑誌連載でリライトした作品をそのままなぞっている。
氷川の単独リライトとするのは明かに問題である。
↓ポプラ社版「少年探偵 江戸川乱歩全集」第四十四巻『人間豹』↓ポプラ社版「少年探偵 江戸川乱歩全集」第三十巻『大暗室』
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