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武田武彦の雑誌連載こそポプラ社版『人間豹』の原型
ここで改めて、ポプラ社から刊行されていた江戸川乱歩作品の児童向けリライト『人間豹』の改作者について私の意見を書いておく。
ポプラ社版『人間豹』
「少年少女譚海」に1952年(昭和二十七年)九月号より1953年(昭和二十八年)八月号まで連載された『人間豹』(原作・江戸川乱歩 脚色・武田武彦 画・成瀬一富)を元にして氷川瓏が単行本に編集。
乱歩の原作を大胆に変更した設定やストーリー、文章などは、ほぼ武田武彦の連載小説と変わらず。
従って名張市立図書館刊行『江戸川乱歩執筆年譜』(監修・平井隆太郎 中島河太郎 1998)の記述には同意できない。
<人間豹 『人間豹』ポプラ社 (1954年十一月)三十日
←代作(氷川瓏)。昭和9・10年の同題作品を少年向けに書き替え>
また評論家の中川右介が『江戸川乱歩と横溝正史』に書いている次の文章にも同意できない。
<氷川版『人間豹』は、ポプラ社から五四年十一月に刊行された。
武田から氷川への代作者の交代は、乱歩が武田の『黄金仮面』を気に入ってなかったからと考えるのが自然だ>
名張市立図書館と中川は、私より遥かに容易に時間もかけずに「少年少女譚海」を入手して、武田武彦の連載を照合出来る立場にあったと思うが、果たして雑誌連載に目を通したのか否かは不明である。
いずれにしても連載終了後、氷川瓏がまとめた単行本がポプラ社より刊行された単行本と武田武彦が執筆した「少年少女譚海」を読み比べ、単行本に武田武彦の影響が見られれば、ポプラ社の児童向け『人間豹』が、
「氷川瓏単独のリライトである」
「乱歩が武田のリライトを気に入ってなかった」
「氷川瓏版『人間豹』」
という推測は五里霧散する。
評論家、中川右介の主張を紹介する。
武田武彦の雑誌連載のリライトを気に入ってなくて氷川瓏を新たに指名した。
ならば気に入っていない武田のリライトなど全く取り入れる筈がなかろう。
事実はどうだったのか?
私の手元に「少年少女譚海」連載の『人間豹』のコピーがある。
そのコピーと氷川瓏がリライトしたポプラ社版『人間豹』とを照合する。
↓中川右介『江戸川乱歩と横溝正史』。厖大な冊数の本が資料として使われており読み応えあるが、武田への評価では納得しかねる。
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