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それではいよいよ、ポプラ社から刊行されていた江戸川乱歩の児童向けリライトの始まり、武田武彦の雑誌連載版『大暗室』を要約紹介していく。
現在は絶版になっているポプラ社の乱歩作品児童向けリライトを懐かしむ声もネットで拝見する。
再刊を希望する声もある。
私はこの意見に懐疑的である。
わざわざ児童向けリライトを読むくらいなら、原作を読んだ方がいい。
だが武田武彦の児童向けリライトは、雑誌連載時、爆発的な人気を呼んだことがうなずける面白さである。
原作を換骨奪胎。読者をハラハラドキドキさせることに執心していることがよく分かる。
元々文学作家だった氷川瓏は、武田のように徹底して面白さを追求するリライトは不可能だった。
氷川の生活を助けようとした乱歩の師としての気遣いだったが、逆に氷川にとってはあらゆる点でプレッシャーになったのではないかと思う。
さて第二部では、武田武彦が「小学六年生」の連載した『大暗室』について、部分的には武田の原文を引用しながら要約していく。
繰り返すが、乱歩の著作権は消滅しており、乱歩が著作権を握っていた児童向けリライトも同様である。
挿絵も一流。
『大暗室』は伊勢良夫、『人間豹』は成瀬一富と一世を風靡した挿絵画家である。
ふたりの著作権はまだ消滅していないが、資料引用の範囲なら現在は挿絵等画像の引用も認められる方向である。
しかもあれだけ一世を風靡したふたりの名前を記憶する人も少なく、このエッセーで名前を紹介した際も、特に驚きの声は出なかった。
ふたりの挿絵を資料引用のかたちで紹介することは、改めてふたりの偉大な挿絵画家を再評価し、本作品が単行本として刊行されるきっかけとしたいためと私の考えを述べておく。
このあたつの作品が雑誌連載のままで埋もれてしまうのは本当に惜しい。是非とも単行本化されて欲しいと心から願っている。
児童向けリライト『大暗室』
小学館「小学六年生」1956年(昭和三十一年)四月号~1957年(昭和三十二年)三月号に連載。
江戸川乱歩・原作(1936,年~1938年 「キング」連載より)
伊勢良夫・絵
武田武彦・脚色
なおこの作品は、昭和二十年代末より流行した絵物語のスタイルをとっており、挿絵と文章が一体化している。
倉橋は十月号と三月号を除く全十回分を所持している。
現在、三月号が何とか入手出来ないか、探している最中である。ただし結末がどうなるか、原作や氷川瓏のリライトした単行本から概要は明らかにできる。
だが実際に読んだ人の言葉で、結末はやや違うという声があり、どうしても三月号を入手したいと考えている。
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