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福子②
あれ?でもなんで?
昭和なんて歴史の教科書でしか知らない。昭和45年…なんだっけかな、おじいちゃんに聞いたんだけど。
ポケットから出して、改めて100円玉を確認する。
___思い出せ、思い出すんだ、きっとそこに何かのヒントがある気がする
頭を抱えて考え込んでいた時、またあの声が聞こえてきた。
「いいのか?急がないと永遠にここから出られないよ。妹も永遠にこの闇で彷徨うことになる。まぁ、俺はその方がいいけどな。苦しみもがく姿ほど見ていて心躍るものはない。さぁ、どうする?」
声の主を探して顔を上げた時、とても高い位置に光が見えた。けれどすぐにあのクラウンが遮った。その手にはさっき飛んでいた風船が握られている。
「麻衣!」
その風船のどれかに麻衣がいるはずだと言っていた。僕は必死で手を伸ばす。
「ウキョキョキョ♪さぁ、どうする?」
クラウンはその手からまた、風船を空に飛ばした。その瞬間、何かの映像が見えた。
「あっ!」
クラウンの肩越しに見える光は一つじゃない、目のように二つある。そしてこのクラウンの顔には見覚えがある。記憶の断片を繋ぎ合わせていく。
___そうだ、さっきの新聞の記事にもあった
閉幕した万博会場に残された、有名な……“太陽の塔”だ。その塔には三つ?いや四つだったかの顔があって、それぞれに意味があったはずだ。僕は慌ててスマホを出して検索しようとして、自分の手を見て「ヒッ!」と声を出した。にゅるりとしたのは、血まみれだったからだ。
「ほらほら急がないと。足元も見てごらん?ゾクゾクするねぇ、ウキョキョキョ♪」
恐る恐る下を見たら、僕から吹き出した血が沼のようになって足首まで見えなくなっていた。血生臭くて、吐きそうになる。
「ウッ!ゲッ、ゲゲゲッゲー!」
「その血が全部流れ出たら、もう人間じゃいられない。でもまぁ、お前自身がそれを望んでいるから、構わないか…ウキョキョキョ」
「僕はそんなこと望んでない!」
「お前は、1人がいいんだろ?妹も友達だっていらないんだろ?正直に言えよ、みんな死んでしまえって。ウキョキョキョ♪」
麻衣も友達も?
___あーそうか、そうすればもういじめられなくて済むんだ
心の奥にあったドス黒いものが湧き上がる。と同時に別の言葉を思い出す…僕が怒るべき相手は僕自身……
→福子
https://estar.jp/users/155526588
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