75人が本棚に入れています
本棚に追加
福子
「なんで僕が小学生なんだよ!」
「いいじゃない、その方がお得なんだし」
遊園地のチケット売り場で親子4人分のチケットを買ってきたのはお母さん。
この春から中学生になったのに、まだまだ身長が伸び足らず小学生に見えてしまうのは
僕のせいじゃない、なのに。
「お兄ちゃん、麻衣と同じ?だよね?ほとんど同じだもんね。その分美味しいもの食べていいよ、大きくなるためにさ」
まだ5年生の妹の麻衣は、わざと僕の隣に並んで背比べをしている。
「うるさいなっ!」
思わず麻衣の手を払う。
「こらこら、健太、小さくて得になるんだからそれでいいじゃないか。大きかったらできないことだぞ」
不景気とかで毎月のお小遣いまでセーブされているお父さんは、うらやましいことのように言ってくる。
「もういいっ!僕、先に行くからね」
「待ってよ、お兄ちゃん」
遊園地で人気のジェットコースター乗り場へ、駆け足で向かう。身長制限があるジェットコースターに、ギリギリ乗れるはずだと昨日のうちに確認しておいた。息をきらして走ってきたのにわりと行列ができていた。
「もう、お兄ちゃん、そんなに走らなくても…」
「これが目的だからね!」
階段の行列に並んでいたら、遊園地の隅の方に古めかしい建物が見えた。
「あれ、お化け屋敷だよね?」
「あ、うん。でも…」
「お兄ちゃん、怖いの?もしかして」
「そんなことないよ、でも…」
お化け屋敷の建物よりも、そこへ向かう途中に薄暗いところがあって、そっちが気になったんだけど。
真昼間だというのに、なんだかあの一部分だけが異様に薄暗い。
→福子
https://estar.jp/users/155526588
最初のコメントを投稿しよう!