福子

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福子

「なんで僕が小学生なんだよ!」 「いいじゃない、その方がお得なんだし」 遊園地のチケット売り場で親子4人分のチケットを買ってきたのはお母さん。 この春から中学生になったのに、まだまだ身長が伸び足らず小学生に見えてしまうのは 僕のせいじゃない、なのに。 「お兄ちゃん、麻衣と同じ?だよね?ほとんど同じだもんね。その分美味しいもの食べていいよ、大きくなるためにさ」 まだ5年生の妹の麻衣は、わざと僕の隣に並んで背比べをしている。 「うるさいなっ!」 思わず麻衣の手を払う。 「こらこら、健太、小さくて得になるんだからそれでいいじゃないか。大きかったらできないことだぞ」 不景気とかで毎月のお小遣いまでセーブされているお父さんは、うらやましいことのように言ってくる。 「もういいっ!僕、先に行くからね」 「待ってよ、お兄ちゃん」 遊園地で人気のジェットコースター乗り場へ、駆け足で向かう。身長制限があるジェットコースターに、ギリギリ乗れるはずだと昨日のうちに確認しておいた。息をきらして走ってきたのにわりと行列ができていた。 「もう、お兄ちゃん、そんなに走らなくても…」 「これが目的だからね!」 階段の行列に並んでいたら、遊園地の隅の方に古めかしい建物が見えた。 「あれ、お化け屋敷だよね?」 「あ、うん。でも…」 「お兄ちゃん、怖いの?もしかして」 「そんなことないよ、でも…」 お化け屋敷の建物よりも、そこへ向かう途中に薄暗いところがあって、そっちが気になったんだけど。 真昼間だというのに、なんだかあの一部分だけが異様に薄暗い。 →福子 https://estar.jp/users/155526588
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